Credit: Ryan Neely / UC Berkeley
カリフォルニア大学バークレイ分校の研究グループは体内に埋め込める極小サイズのワイアレス・センサーの開発に成功した。ウエラブル端末のマイクロ版となるセンサーチップで人体の神経、筋肉や器官の活動状態のリアルタイム・モニターが可能になると期待されている。
写真のように単純なセンサーチップのダウンサイズ化は試みられてきたが、このセンサー(注1)の特徴はバッテリーレスであることで、これにより逆に筋肉に電気刺激を与えることもできる点で、麻痺した筋肉の回復治療、免疫性向上、炎症を抑えるなど広範囲の医療に応用が開ける。
(注1)塵のように小さいという意味で「神経の塵(Neural Dust)」と呼ばれている。
研究チームの実験ではネズミの筋肉と末梢神経にセンサーチップを埋め込んで電源とデータ送受信には超音波が用いられた。超音波はラジオ波のように人体内部に届くので、このセンサーチップは神経や脳だけでなく一般の器官にも適用できるため「人体テレメトリー」と呼ぶ新しい医療技術分野が開かれる。研究成果は8月3日付の雑誌、Neuronで報告される。
埋め込まれた3x1x0.8mm角のセンサーチップ(上の写真)を駆動するのに研究グループは100μsec間隔で540nsec巾の超音波パルスを6回づつ照射した。チップは保護目的で外科用エポキシ樹脂で覆われている。このため今回実験された筋肉や末梢神経以外に中枢神経や脳に埋め込むことも可能となる。
現時点では筋肉と神経活動のリアルタイム・モニタの段階だが、次世代デバイスではチップが脳とのインターフェース化を行うことが狙い。そうなれば「神経の塵」は「人体IoT」となり体の麻痺した患者が計算機を使用したりロボットアームを動かすことも夢ではない。
センサーチップのサイズは50ミクロンまで小型化できるので、数本の神経軸索に取り付いて電気信号をモニターしたり逆に刺激を与えることができる。研究チームはこれより先にセンサーチップからラジオ波で情報伝達を試みたが人体内部での減衰が大きく実用には適さなかったが、超音波で情報送受信とエネルギーの送信にめどがついた。