メルケル体制の終焉 Part 1

26.11.2017

Photo: thisisengland.info

 

 9月にドイツの連邦議会総選挙が実施されてから2カ月が経過し、強い政治安定として知られてきたドイツのメルケル政権は未だに安定した政権を発足できずにいる。政権樹立ができないのは1949年以来のことである。メルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が自由民主党(FDP)と緑の党との間で連立協議は19日に決裂、連邦議会の解散による再選挙を支持するドイツ国民の声が高まっている。

 

国民の68%は再選挙を支持

 最新のZDF-Politbarameter世論調査では、「ジャマイカ連立」(注1)が成立できなければ、68%は連邦議会の解散による再選挙の支持を示した。反対は29%と低く、「ジャマイカ連立」が今後成立したとしても、その支持は約50%であった。

 

(注1)CDU・CSUのイメージカラーの黒と黄色のFDP、緑の緑の党を組み合わせると連立政党のイメージカラーがジャマイカの国旗と同じであることから、ジャマイカ連立と呼ばれている。

 

再選挙は既存政治の弱体化

 メルケル首相が連立政権樹立に苦戦している主な理由は移民問題を巡る関係各党の見解の違いにある。2016年に4期目続投を表明してから、移民問題に対する高まるドイツ国民の不満と反対に対して、メルケル首相は自身の移民門戸開放政策が失敗であったこと認め、移民の家族の受け入れを認めず、約10万人の移民の国外送還を実施することを公約とした。連立交渉に加わっている緑の党は、ドイツが受け入れた移民の家族の受け入れを認めるべきだと主張、共通の解決策に合意できなかったことが連立協議の失敗となった。

 

 メルケル首相は連立協議の決裂後、残された少数与党内閣と再選挙の選択肢のうち、再選挙を望んでいることを示唆した。解散再選挙はシュタインマイヤー大統領の判断で決められるが、その場合第1党のCDU・CSUの支持率の低下の可能性が高く、再選挙は出来る限り避けたいとしている。しかし、政権不在の状態はドイツだけでなく、EU全体に多大な影響を与えているため、早急な決断が望まれている。

 

新しい首相を望むドイツ国民

 今年の2月に行われたYouGovの世論調査では、64%の有権者がメルケル氏以外の新しい首相を望むと答えている。そのなかでも、42%は首相交代の時期が来たと強く感じていることを示した。メルケル氏が首相を「続けた方が望ましい」と答えたのは19%であった。メルケル首相が率いる CDUの支持者の間でも、メルケル氏への支持の低迷が目立ち始めている。

 

 

 

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