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連立協議が決裂に終わり、少数政権か再選挙の選択肢に追い込まれたメルケル首相は、中道左派で第2党のドイツ社会民主党(SPD)と再び連立を組むか否かの協議を30日に行うこととした。協議結果によりメルケル首相が率いるCDU・CSUとSPDは3度目の「大連立」を組む可能性がでてきた。安定多数の政権を求める一方で、両党内部だけでなく有権者からの不満が再び高まることが予想される。
9月のドイツ連邦議会総選挙ではCDU・CSUの得票率は41.5%から32.9%と1949年以来最も低い得票率となった。またSPDも25.7%から 20.5%と大敗した。2党合わせて得票率は53%と低く、前回の2013年総選挙の67.2%を大きく下回る。国民の既存政治政党への不満と信用の低下による政党の衰退である。
大連立による政権樹立の可能性
SPDは保守派のCDU・CSUとの過去4年間を含む8年間にわたる大連立で中道右派よりとなったことで、左派有権者が不満を示したことが得票率の低下を招いた。選挙後さらなる支持率の低下を避けるため、シュルツ党首は連立を組まず、最大与党としての立て直しを図ることを決断した。連立協議を前に、連立を組まず、メルケルの少数政権への支持といった方法での政治安定を図りたい考えを示している。だが、党内外からの大連立を求める圧力により、再び大連立による政権樹立の可能性は残されている。
大連立樹立の障害となるのが、財政政策と特に移民受け入れ問題である。メルケル首相は移民の受け入れ上限を年間20万人に限定したいのに対し、SPDは上限のない、移住を希望する移民を全て受け入れることを政党政策としている。それ以外の外交、安全保障、EUに関しては見解が一致する余地がある。この移民受け入れ問題の見解の不一致こそが、今後両党のさらなる弱体化を招くリスクとなる。
SPDとの大連立が成立すれば、メルケル政権4期目が早くて年末、1月には発足すると思われる。連立協議が失敗に終わり、再選挙となれば、2018年春までは政治不安定が続くことになる。
ドイツのための選択肢(AfD)の躍進
9月の総選挙で「反EU」、「反移民」を掲げる進興右派政党のドイツのための選択肢は、得票率を4.7%から12.6%と大きく躍進した。当初、AfDの支持者は主に移民がいない、低所得の東ドイツ人コミュニティの有権者が多いとされた。しかし、投票結果を調査した独Institute for Democracy and Civil Societyによると、支持者は上位中産階級から移民が多いいコミュニティを含め幅広い有権者の支持を得ていることがわかった。
メルケル新政権の樹立が難航して、難民問題への取り組みが遅くなればなるほどAfDの支持が拡大していく可能性がある。このことはCDU・CSU党内からの早急に連立政権を発足する圧力となっているが、有権者が納得する政策が取れるかは疑問である。たとえ連立政権でこの危機を乗り越えても移民問題は時限爆弾であり、長期安定政権は望めそうにない。
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