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国連安保理は8月と9月の2回にわたり、北朝鮮の外貨獲得原を絶つことを目的に追加的経済制裁措置を採択している。北朝鮮の核・ミサイル開発の資金調達を困難にすることが狙いであったが、期待された効果はなく、北朝鮮は8月以降4回のミサイル発射実験を行っている。制裁効果を無力化する一つの理由は安保理の経済制裁措置に違反して、北朝鮮と貿易を進めてきた国が多いことで、49カ国もあることが最新の調査で明らかとなった。
米科学国際安全保障研究所(Institute for Science and International Security:ISIS)の2014年3月から2017年9月を対象とした調査によると、規模や種類は異なるが、49カ国が国連経済制裁に違反して北朝鮮と軍事や商業取引を行ってきた。これらの国は大量破壊兵器の拡散行為への規制がない、輸出規制がほとんど存在しないか弱い、汚職が多いといった特徴をもつ国である。
国連経済制裁に違反した49カ国のうち13カ国(アンゴラ、キューバ、コンゴ共和国、イラン、エリトリア、ナミビア、モザンビーク、ミャンマー、スリランカ、シリア、ウガンダ、タンザニア共和国、エジプト)は北朝鮮から軍事教育や訓練を受けた、北朝鮮に軍用機器、装置、部品などを輸出している又は北朝鮮から軍用装置、武器を輸入している国である。なかでも、国連によるとアフリカのモザンビークとタンザニアは北朝鮮から地対空ミサイル又は関連装置を輸入している。
非軍事活動で国連経済制裁に違反した国はアンゴラ、ブラジル、ブルガリア、中国、エジプト、エチオピア、ドイツ、インド、イラン、マレーシア、ナンビア、ポーランド、ルーマニア、ロシア、シンガポール、スリランカ、スーダン、シリア、アラブ首長国連邦の19カ国であった。北朝鮮政府の「フロント企業」の活動、北朝鮮に関わる資金取引や他の経済・金融活動が報告された国である。
北朝鮮に経済制裁に含まれている製品を輸出した国、北朝鮮から鉱物を輸入した国は18カ国(バルバドス、中国、コスタリカ、エジプト、エルサルバドル、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イラン、アイルランド、マレーシア、メキシコ、パキスタン、フィリピン、スリランカ、シリア、ベトナム)にのぼる。
科学国際安全保障研究所は、国連経済制裁に違反した国には協力するように圧力をかけること、効果がない場合にはこれらの国への経済制裁を実施することの必要性を提唱している。下の図に示すように金正恩体制になってからのミサイル実験頻度は際立っているが、これを支えているのが制裁を無力化する国々の存在である。制裁が効果を発揮するには対北朝鮮貿易が野放し状態にあるこれらの国々と直接交渉する必要があるが、それは限りなく不可能に近い。アフリカを中心とする独裁体制を是正しなければならないからである。