ECBが預金保護廃止を検討

16.11.2017

 

Photo: voxeurop

 

 2016年からEUで始まった金融機関の再生・破綻処理の際の「ベイルイン」では、銀行の債権保有者から一般預金者までが破綻処理や救済資金の負担対象となっている。ベイルインが発動された場合、欧州中央銀行(ECB)の規則では、銀行破綻の際に10万ユーロまでの預金が預金保護スキームで守られている。 ECBは、この預金保護スキームを廃止して、代わりに「限定的な預金の引き出し」の検討を始めた。

 

 8日に発表された、「欧州の銀行に関する危機管理の枠組みの見直し」と題したECBの最新リポートによると、銀行により流動性をもたせるために預金保障の廃止が提案されている。口座は最大で5日間預金封鎖されるが、セイフガードとして、欧州銀行監督機構と銀行の判断で「預金者の申し出から5日間の必要生活費分に適した額の現金を銀行口座から引き出すことを可能とする」措置が盛り込まれている。

 

 

 これは預金保護スキームを廃止することで、銀行の破綻が明らかとなった場合に起きる預金者による取り付け騒ぎを防ぐことが主な目的である。ECBは取り付け騒ぎで、さらに銀行の経営状態が悪化、金融システム全体の混乱を招くのを阻止する手段としている。

 

 5日間の「バンク・ホリデイ」で銀行の破綻処理の方針が決まるとは限らない。キプロス、ギリシャ、イタリアで起きた銀行のベイルインを見ても、預金封鎖が解除されまで数カ月と時間がかかっている。銀行に預けた預金が銀行の救済金として使われ、破綻処理の期間は口座が凍結され、緊急措置として限定された金額だけが口座から引き出せる。口座の凍結期間は保障されていなく、預金がどの程度救済金として使われるかもわからない。

 

 ECBが預金保護スキームを廃止すれば、ベイルイン制度の導入と同様に、世界各国でも導入が検討されることになる。しかしこれまでの破綻処理をめぐる騒動を見れば明らかなように、5日間の生活保障は、突然の破綻宣告でパニック・暴動を回避する安全弁的な措置でしかない。今回の預金保護スキーム廃止の提案は「個人資産リスクは自己責任で回避せよ」というメッセージが込められている。

 

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