EUが国境を越えるオンライン・ショッピングを完全自由化

22.11.2017

Photo: uschamber

 

 EUがは深刻な財政問題や難民問題を抱える一方で、排ガス規制で先進国を先導する姿勢を強めている。強大国を目指して経済共同体への求心力増大を模索するEUは、2018年から加盟国間の貿易障壁を下げて、より安い商品を加盟国の国民が購入できるようにする。

 

 EU議会と欧州理事会及び欧州委員会は11月20日、「地政学的障壁」と呼ばれる加盟国間のオンライン・ショッピングの障壁をなくすことに合意した。デジタル経済担当理事によれば、これによってEU市民は国境を越えてデビットカードもしくはクレジットカード決済の商品のオンンライン購入やホテルの予約を自由に行うことができるようになる。

 

 送料を別にすれば、消費者は同一家電を加盟国間で比較し最も安い価格で購入することができる。これまで国境を越えるオンライン・ショッピングの60%は業者サイトを介した間接購入だったが、これによって直接取引が可能になる。

 

 これまでのようにEU内のオンライン・ショピングでデビットカードやクレジットカードの発行国制限がなくなる。ただし自由化には音楽・映像コンテンツは含まれない。6月には携帯電話の国別ローミング課金体制に終止符が打たれた。EUは世界に先駆けた「デジタル単一市場」(DSM)に向けて法規制の整備を加速している。

 

 デジタル単一市場は2011年にユンケル委員長が提唱したデジタル経済政策で、56兆円の経済効果を持つとして積極的に取り組んでいる構想。今回の措置も「地政学的障壁」をなくすことで、一般消費者には不公平感がなくなるようだが、デジタル経済普及への布石とみられる。いかにもEU消費者に便利なようだが、全ての商取引をEU執行部(欧州委員会)が把握して税金が国にでなくEUに流れ込む仕組みと見れば、構想の背景にある今日大国への野心が透けて見える。

 

Credit: europa.eu