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EUは11月9日、パリ議定書に基づく排出ガス規制に本腰をいれるため、2021年後に欧州の炭素市場の改革を行うことに合意した。EU議会とEU参加国は世界最大規模の炭素市場の改革の暫定合意にこぎつけた。重い腰を上げたようにみえるEUだが、炭素市場の過剰供給を解消するだけでここ数年は実質規制は据え置きとなる。
EU排出取引制度(EUETS)によって企業のCO2排出量に上限が課せられることになる。企業は排出量割り当て量を炭素市場で取引することができ、それによってグリーンエネルギー促進することにつながる、というのが狙いだが実際には排出量の取引価格が低すぎて効果が期待できない。暫定合意とはいえEUが炭素市場改革に動き出したことで、パリ議定書の順守へ向けて本格的に踏み出したEUを象徴するかのような印象だが実体は削減効果には限界があるようだ。
EU議会は炭素市場の思い切った改革を進め、排出量規制を本格化したい考えである。EU排出取引制度の市場安定化準備制度(Market Stability Reserve)を強化して、本格的な排出量規制を推進するとしている。
この政策は炭素市場の供給過剰を狙ったものだが、一方では排出規制による企業の安全保障として低炭素化対策の支援も取り込まれている。そのため環境保護団体はパリ議定書の実現に効果がないとして批判している。膨らんだ排出量規制の供給過剰を減らすだけでは、受給関係をバランスするだけで排出量規制には効果がない、としている。
28参加国中で実質的な改革案を実行できるのは数カ国に限られ、その効果がでるまでには時間がかかりすぎるというのが実情だが、企業側には時間稼ぎとして歓迎されている。パリ議定書ではEUは2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で40%削減するとともに、再生可能エネルギーの27%増大が要求されている。仮にすべての車をEV化したところで、排出量は14%の削減にしかならない。その上、発電で排出量の増減は相殺されるから実質効果はない。思い切った削減は企業の排出量規制しかないが、強行すれば経済失速で命取りになりかねない。