Photo: ec.europa.eu
EU執行機関である欧州委員会は英国のEU離脱後に、大蔵大臣ポストを据えて財源管理を一層強め、超大国を目指す方針を鮮明にした。ユンケル委員長の構想はEU加盟国の国家財政に立ち入って構造改革を促し、EU結束力を高めて強大国を目指している。
この方針に英国のEU脱離賛成派は脱離決定を肯定化するものとして反撥する一方で、反対派は英国の離脱がEUの強国化を遅らせるとしている。25日の欧州員会では現在高まっているEU統合の動きを損なわないために、2019年の英国離脱までに財政改革案を進めるよう欧州議会に提案することを合意した。
「未来の欧州」と呼ばれる構想の中では2025年までに加盟国同士の銀行連合を結成すること、EU内の統一労働許可証、サイバーセキュリテイ局、セルビア、モンテネグロのEU加入などが含まれている。これらの改革案はユンケル委員長が先月明らかにした欧州ビジョンの骨子となる。
英国EU離脱肯定派と反対派の間で正反対の評価となる今回の改革案は、2019年の英国離脱の影響の大きさを物語っている。英国の離脱でEU統合の求心力が弱まる一方で、拠出金の穴埋めを加盟国が分担させるには現行の体制では不十分でEU財政の一括管理が不可欠となるからだ。
EU予算は2015年から上の表のように右肩あがりで、拡大を続けてきた。EU強国を目指す動きは予算規模で明らかだが、加盟国の財政負担の代償を伴う。
欧州の移民問題とカタロニアの独立問題がEU統合の課題となる一方で、財政不足が現実化すれば欧州委員会の指導力への影響も懸念される。欧州員会としては2019年までに財政管理ができる体制を整えておく必要に迫られていた。しかし加盟国の財源をブリュッセルの役人(欧州委員会)が管理することにへの反撥が強まれば、EU統合の求心力が弱まる。大蔵大臣といっても主権国家28の財政プログラムに関わるには、その傘下に膨大な官僚と事務官が必要なことは明白だ。すでに肥大化し役人天国と揶揄されるブリュッセルがさらに多くの役人を登用することになれば、不満がつのり欧州統合の求心力に影響するだろう。
2019年以降の統合が強まり強国EUが誕生するのか、それとも崩壊が早まるのか、英国離脱の影響が楽観論の予想より大きかったようだ。
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