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2010年にオバマ政権がロシア国有原子力企業ロスアトムによるウラニウム・ワン(注1)の買収を承認する以前に、ロシア原子力業界の複数の幹部がウラニウム・ワンの買収を可能にする目的(注2)で、2009年から不正(脅迫、賄賂、キックバック、マネーロンダリング)を行っていたことがFBI捜査資料で明らかにされた。
(注1)買収前はトロントに本部を置くカナダ法人のウラン採掘企業であったが、ロシア政府がロスアトム傘下の米国子会社 ARMZ Uranium Holding を介して、100%所有権を持つ世界有数のウラン採掘企業。
(注2)濃縮ウランの供給で、アメリカのロシアへの依存を強めれば、米国の原子力エネルギー業界で優位な立場に立てる。ウランの重要性は新興国(中東・アジア)への軽水炉建設では、原子炉建設と燃料供給を総合して進める動きが強まっていることと、核兵器製造・維持のためである。米国内はもとより先進国での原子炉建設は伸び悩む一方で、新興国のエネルギー需要に牽引される形でウラン市場(生産量)は世界最大の生産国であるカザフスタンは増加傾向にあり、世界第2位、第3位のカナダとオーストラリアの合計を上回る。東芝は2010年にウラニウムワンとの提携を見直し同社の最大20%までのウラン取引権を得ている。核兵器製造には熱核兵器(水爆)では水爆本体はプルトニウムコアだが、2-ステージ、3ステージ型の大型熱核反応爆弾ではウランも使用されるため、維持を含めれば依然としてウランの需要は残る。ウラン市場が均衡状態にあるのは需要の40%が軽水炉使用済み核燃料やロシアの核兵器解体などのリサイクル資源で賄われているためで、これらの枯渇と新興国の成長に合わせて将来は供給不足が予測される。将来のウラン争奪を見越して生産国は新規ウラン鉱山開拓を推進している。
オバマ政権の工作
米政治専門誌のThe Hillによると、オバマ政権はロシアの米原子力業界における活動を許し、犯罪活動のFBI情報を隠蔽した上で、ロストアトムによるウラニウム・ワンの買収を承認した。
FBIは2009年からロシアの原子力業界の内部幹部(FBIアセット)を使って、機密情報(財務資料、隠し録音、内部電子メールなど)を入手して、米国原子力業界におけるロシアの影響力を高めるための犯罪行為を捜査していた。捜査によって、クリントン財団にはロシアの原子力業界の幹部から数百万ドルの資金が渡ったことを示す証拠が明らかになった。
司法省はFBI捜査で明らかにされた犯罪行為の資料を隠蔽、その後4年間極秘裏に捜査を続けた。国民や議会にもロシアのウラニウム・ワンの買収への関与の情報は公表されなかった。FBI捜査情報が公開されていれば、2010年のウラニウム・ワンの買収の承認とその後の2011年のロスアトムの米子会社Tenex社による米原子力への濃縮ウランの販売は承認されなかったと思われる。特にTenex社による濃縮ウランの販売は、1990年代の「メガトン・メガワット」計画で、ソ連時代の核兵器を再処理したウランの販売以外は禁止されていた。
ウラニウム・ワンの買収
2010年にオバマ政権は、米国内ウラン資源の20%の鉱山権益を持つウラニウム・ワンのロシア国有原子力企業ロスアトムによる買収を承認した。ウラン権益はアメリカ国家安全保障上、重要な戦略的資産と位置づけられているため、国務省や対米外国投資委員会の承認が必要であった。しかし、国の安全保障にも関わる買収案件であったにも関わらず、満場一致で委員会は承認、ロシアに米国のウラン権益が譲渡された。
ウラニウム・ワンの買収に関して、2015年にニューヨーク・タイムズ紙やクリントン財団の真相を暴露した「クリントン・キャッシュ」は、当時国務長官であったヒラリー・クリントン氏の慈善団体のクリントン財団がウラニウム・ワンの買収で、ロシア側、ウラニウム・ワンなどから計1億4500万ドルの寄付金、ビル・クリントンはモスクワでの公演の謝礼として50万ドルを受け取っていたことを暴露している。
クリントンの果たした役割
ウラニウム・ワンの買収で、当時クリントンの国務長官の「影響力」、買収を承認する見返りに金銭的報酬を受け取ったとされる。ロシア側はロスアトムの関連企業を通じて、ウラニウム・ワン側からは大株主全員から寄付金が送金された。ウラニウム・ワン買収劇を巡る黒い疑惑はようやく証拠資料が明らかにされ事実関係が明確になった。
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