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EV界の期待を一手に背負ったようなテスラ社だが、これまでのニッチ路線から量産車メーカーへの転換を図った戦略は昨年末の40万台というバックオーダーを抱えて大量生産体制に入ったが、思ったより生産台数が伸び悩む結果となった。第3四半期の生産と納車実績が当初予定の生産・販売計画を大幅に下回った。
テスラ社は第3四半期に26,150台のEVを販売したが、期待された量産車、モデル3の販売台数は220台に過ぎなかった。最初の30台を手にした購入者は全員がテスラ社の社員であった。6月の量産開始時にはテスラ社が掲げた生産計画は9月末までに、1,500台である。
テスラ社は生産遅れについて、製造工程の問題としているが、具体的な理由を明確にしなかった。本社工場とネヴァダ州にパナソニックと建設したバッテリー工場は順調に稼働しているものの、わずかな問題がネックとなって生産性を損ねているとした。
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イーロン・マスクCEOの生産計画は8月に100台、9月には1,500台と指数関数的に生産台数を伸ばせば12月には月産20,000台に達するとしていた。6月28日にマスクCEOは月産20,000台に達するには生産ラインは6カ月に渡って量産体制確立の厳しい試練となることを認めていた。
40万台のモデル3購入希望者は1,000ドルの予約金を支払っている(注1)。マスクCEOは8月時点でも第3四半期に1,500台を生産し2017年度末までに月あたり20,000台を生産、2018年度の中で、週あたり10,000台、月あたり40,000台を予定しているとしていた(注2)。
(注1)テスラ社は量産車となるモデル3は35,000ドルからとしているが、現在製造されているのはバッテリー容量の大きいタイプで44,000ドルのものであり、自動運転などのテスラEVらしくするオプションをつけると60,000ドルと量産車とは言えない価格帯になる。
(注2)40万台のバックオーダーを解消するのに20カ月を要する。「現在予約すれば2019年度には納車できる」とするのは、月20,000台では不可能である。
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第3四半期にテスラEVのハイエンド車となるモデルSとSUVのモデルXをそれぞれ14,065台、11,865台販売したが、量産モデルの販売台数は220(注3)となった。テスラ社も量産車メーカーの宿命であるサプライチェーン体制の難しさを経験することになった。テスラ社が「ボトルネック」と表現する量産体制上の具体的な中身については憶測が飛び交っているが、解決できたかどうかは数ヶ月後にはっきりする。その時点で改善が見られなければテスラ社のモデル3量産計画は根本的な問題を抱えていることになる。
(注3)テスラ社の発表では10月に入って生産台数は260となった。
Updated 06.10.2017
WSJの10月6日の記事によると生産台数が伸びない理由(ボトルネック)が、通常の量産工場ではない手作業の製造過程があり、それが律速となっていることが指摘された。ニッチ路線の場合は許される手作業過程は量産車製造ラインでは徹底的に省かれることを学ぶ前に、ネットで発注を受けて大量生産に踏切らざるを得なかったテスラ社は多くの大手製造メーカーが経験した試練を受ける。