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腐敗した政治家を鋭く追及してきた反骨の人気ブロガー、ダフネ・カルアナ・ガリチア記者が10月16日に車に仕掛けられた爆弾で暗殺された事件が波紋を投げかけている。現場に駆けつけた息子で記者でもあるマシュー・ガリチア氏が母親は腐敗政治家を追及したために暗殺されたとして、マスカット首相を名指しで批判したためである。
自宅近くで小型車は強力な爆弾の衝撃で吹き飛ばされ、マシュー氏が駆けつけたときにはバラバラになった遺体が付近に散らばっていたという。ガリチア記者はベテラン記者で自身のブログでこれまで、パナマ文書にも登場するマスカット首相とその周辺の腐敗ぶりを暴露する記事を何度もかいていた(Julian Robinson)。
43万人の島民はガリチア記者の死を悲しみ、数千人が彼女の家の近くに集まり喪に服した。また火曜日には「正義のダフネ」と呼ぶデモ行進が予定されている。しかしマルタ島で爆弾で暗殺されたのはガリチア記者が初めてではない。彼女は1年で4人目の犠牲となった。
背景にある腐敗政治の闇
マスカット首相は暗殺事件を重くみて、野蛮な犯罪として犯人の検挙を約束したが、その首相本人が暗殺者であるとしてマシュー氏は避難している。マスカット首相の腐敗疑惑を取材中に暗殺された背景からすれば、限りなく黒だがこうした事件が闇に葬り去られることは少なくないことも事実である。
マスカット首相は暗殺の4カ月前に選挙で地滑り的勝利を収めたが、ガリチア記者はアゼルバイジャンの有力者から賄賂を受け取りパナマ諸島の隠し口座に送金した問題を取材中であった。
暗殺者の誤算
しかしマルタ島で連続する暗殺事件の中で、今回は女性一人を殺すのには遺体を損傷する凶悪で、息子が現場に居合わせたことでこれまでとは異なる全島民の関心事となった。今回の事件を契機にしてマルタ島にある政治家の犯罪が処罰されないという気風が批判の対象となった。折しもJFK暗殺の文書公開期日が迫り世界中のジャーナリストが暗殺事件に再び向き合う中での暗殺事件の波紋が大きかったことは暗殺者の誤算だったようだ。
マフイアが車に細工して暗殺する犯罪は数多いが、過去の話になりつつある。JFKにしても肝心な文書が都合よく紛失しても、8名の狙撃手を含む20数名の暗殺者の実名を誰でもネットで知ることができる。
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