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トランプ大統領が政権について9月後、公約の一つであるメキシコ国境沿いの壁が実現に向けて第一歩となる試作モデル(高さ約9m)8組が完成し公開された。予定ではカルフォルニア州からテキサス州にかけての全てのメキシコ国境に設置される。
8つの試作モデルは今後、評価され選定された最終モデルが設置されることになるが、総額216億ドルのこの事業には乗り気でない。しかし国境警備隊は国民がトランプ指示にまわった理由のひとつであったこの計画を歓迎している。現在の国境は20年前に建設されて老朽化が進んでいる。
壁が設置されているのは1,900マイル(3,040km)のメキシコ国境の654マイル(1,046km)に過ぎず、サンデイエゴ近くの高さ5.4mの壁はこの3年で2,000回突破されている。そのため国境警備隊はトランプ大統領の壁が予算化されなくても、新しい壁を設計するとしている。
米国内の6社が8組の試作モデルを製作したが、今後30-60日で完了する技術評価で選定された企業が製造と設置を担当する。評価基準となるのは乗り越えにくくかつトンネルを作りにくいこと。最終案は複数モデルとなっても良い。
コンクリート壁は頑丈だがメキシコ側の見通しがきかない。そのため8種の壁の2モデルは向こう側が見える設計になっている。またコンクリート壁は世界最大のコンクリート供給メーカーの協力が必要だが、メキシコのCemexとスイスのLafargeHolcimは参加を辞退している。試作モデル決定後の最大の難関は議会の予算案通過となるが、工事に際してコンクリート供給メーカーの協力がなければ少なくともコンクリート案は現実的でないとみられる。
規模は大きいが単純な構造のため、幅広い経済効果は期待できない。しかし国境の壁の老朽化で国境の意味が薄れつつある現在、国境警備の強化は重要課題であることは変わりない。
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