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欧州の政府主導によるEV普及は補助金とセットで順調に進んできたが、太陽光パネル同様に政府補助金は普及のためのインセンテイブであり、特定期間に限定される。EV販売が補助金に強く依存しているが、共和党の新税制計画では最大7,500ドル(日本円で約90万円)の補助金が打ち切られる。
EV販売好調の背景に補助金
米国の現行の補助金制度ではIRS還付金として購入者が受け取ることができていた。2010年から開始されたこの制度では、当初5kWh以上のバッテリーを有するPHVもしくはEV購入で、2,500ドルの優遇を受けることができ、それ以上のバッテリー容量ではkWhごとに417ドルの追加補助で最大7,500ドルまでの優遇措置が受けられた。このためバッテリー容量が大きいテスラEV購入ではこの制度で最大の補助金を受け取ることができる。
しかしこの制度の対象は購入EVのメーカーの販売総数が20万台までとなるが、2010年から今日まで、どのメーカーも販売台数が規定に達していない。販売台数で先頭を走るテスラ社と激しい追い上げをみせるGMが近く、規定の販売台数を達成しこれらのメーカーのEV購入では補助金を受けられなくなる。
補助金縮小でEV販売が低下
補助金制度がなくなればEV販売が低下することは目に見えている。中国の大手EVメーカーBYDが国の補助金縮小で減益となっている。中国でEVシェアトップののBYDは第3四半期の純利益が前年比で23.9%の減益となった。減益の要因は新車(EV)販売の落ち込みで、政府補助金の縮小によるものである。
新たに小規模風力発電、地熱発電、太陽光、燃料電池を対象にして新規補助金制度が追加で盛り込まれているため、グリーンエネルギー全体でみれば新税制改革は悪影響ばかりではないとする見方もある。米国の全方位エネルギー政策は健在で2012年までの原子力補助金制度が延長される。しかし風力発電には現在kWあたり2.3セントの補助金がついているが新税制では1.5セントに後退する。
米国でEV販売が多い州は下に示すように見事なまでに民主党地盤である「青い州」に重なる。つまりバラマキ政策の民主党の強い州ではEV販売が多い。EV販売が好調なフロリダ州は民主党と共和党が接戦となる「スイングステート」であるが、今回の税制改革も共和党の政策が反映されている。
Credit: energytaxsavers
結局、新税制計画の狙いは過去90年にわたって続いてきた化石燃料への優遇措置から再生可能エネルギーへの転換を促進することにある。欧州各国がこぞって打ち出す自動車業界での化石燃料の締め出しもこの税制改革と無関係ではない。国境を越えた利益団体として政治的圧力を利用して権益を貪ってきた化石燃料企業が権益を守りきれず、非化石燃料(再生可能エネルギーだけではない)に道を譲らざるを得ない「大きな力」が働いている。
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