Photo: United States Department of Defense SSGT Phil Schmitten
北朝鮮による核搭載ICBMの実戦配備が進められ、朝鮮半島の緊張が高まるなかで米軍の攻撃兵器の配備も着々と進んでいる。北朝鮮の報復攻撃のリスクで現実的な米軍の選択肢は絞られ、戦術核による攻撃は有効な手段とされた。グアム島アンダーセン基地には戦術核を搭載した戦略爆撃機(B-52)やステルス爆撃機(B-2)配備されている。
B-2爆撃機に16個が搭載される戦術核(小型核爆弾B-61)は最近、精度や地下攻撃力を増強した改良型B-61-12が開発され、これが搭載されれば戦術核攻撃力は格段に増大する。戦術核で標的となるのは北朝鮮の各施設を中心とする核インフラで、死傷者を大幅に抑えることができるとして、現実的な選択肢となる可能性が高い。
プルームの日本への影響
大型核爆弾の使用では核攻撃による数100万人規模の死傷者だけではすまない。プルームに夜広範囲の核汚染が無視できない。ジェームス・マーテイン非核拡散研究センターのシミュレーションによれば、大型核爆弾の爆発で吹き上げられる放射性物質のプルームが南下して北九州と四国を含む西日本一帯に到達し、放射線汚染が深刻化する。一方、戦術核(B-61)は効果とプルームの影響は局所的になる。これがトランプ政権が戦術核を有力な選択肢とする理由である。
Credit: Melissa Hanham/James Martin Center for Nonproliferation Stidies
戦術核攻撃の効果が疑問視されるにもかかわらず、トランプ政権は双方の人的犠牲として戦術核攻撃を重要視し、本土基地で「ブラディ・ノーズ作戦」に基づいた核攻撃訓練を行っている。下図はB-61旧型(上段)と改良型B-61-12(下段)。改良型ではレーダーを弾頭に備え方向舵を制御して標的への命中精度を高めている。
冷戦時の戦略爆撃構想を支えた自由落下の大型核爆弾は陳腐化し小型戦術核が主流となった。170トン級のB-61はロスアラモス国立研究所で開発され1966年から配備されている。地下施設攻撃用を含む12種が開発され最新型のB-61-12は将来は、メガトン級の水爆(B-83)を置き換えるとされる。