ナイーブT細胞の役割解明で免疫療法が新展開か

18.11.2017

Photo: amgenoncology

 

免疫細胞といえば体内に侵入する細菌を攻撃し死滅させる人体の守護者のイメージが強いが、一方で逆に癌細胞が増殖する手助けとなる諸刃の刃でもある。そのためリンパ球の一種であるエフェクターT細胞の研究が活発に行われている。

 

最近の研究では一歩踏み込んで、リンパ節内で抗原を提示した樹状細胞と遭遇することにより活性化される未熟なT細胞(ナイーブT細胞)も調べられるようになった。ミシガン大学の研究グループは、最新の研究でエフェクターT細胞の機能が損傷している場合には、ナイーブT細胞も異常が見られることを発見した(Xia et al., Science Immunology 2, eaan4631, 2017)。

 

これまでエフェクターT細胞が癌細胞の免疫性を制御すると考えられていたため、ナイーブT細胞の研究は少なかった。またエフェクターT細胞が腫瘍の周囲に存在する正常細胞からなる腫瘍微小環境に少ないことも研究対象にならなかった理由である。

 

研究グループはこの研究で、腫瘍の代謝によってナイーブT細胞を活性化させることを見出した。グルコースの代謝で形成される乳酸がナイーブT細胞に悪影響を及ぼす。腫瘍が作る乳酸が一定量を越えるとナイーブT細胞に損傷を与えアポトシス(死滅)を引き起こす。

 

Credit: University of Michigan

 

現在の免疫療法の大半の研究はエフェクターT細胞に関するものだが、今回の研究によりそれ以外にナイーブT細胞の重要性を提起している。研究グループはナイーブT細胞機能を復活させるために代謝の制御を目指している。ナイーブT細胞の機能を復活することでエフェクターT細胞の機能を元にもどせれば、免疫療法が効果的に処方できるようになると期待される