ペロブスカイト太陽電池の効率が21.6%に

11.12.2017

Photo: cemag

 

ペロブスカイト太陽電池は日本初の高効率・低コストの太陽電池材料として世界中で研究開発ブームを起こしたが、その特性は急速に改良され高価な結晶シリコンに迫りつつある。最新の材料ではエネルギー変換効率は21.6%に達し、これまでシリコンの牙城であった高効率太陽電池材料に影響を与えるほどになった。

 

ペロブスカイト材料は高温超伝導材料で1980年代後半に脚光を浴びた結晶であるが、太陽電池材料への応用では有機ハイブリッド物質やカチオン置換で高効率化が可能で、スピンコートで薄膜材料を製造できるため低コスト製造が可能な点でも潜在能力が高い。

 

スイス連邦工科大学ローザンヌ校の研究グループはルビジウムを添加した新しいペロブスカイト材料で世界最高のエネルギー変換効率を達成した。同時に、これまでペロブスカイト材料の弱点であった熱安定性を克服し、高温でも安定な出力を維持できる新型ペロブスカイト太陽電池の開発に成功した(Sakiba et al., Science 354, 206, 2017)。

 

 

Credit: M.K. Nazeeruddin/EPFL

 

研究グループはペロブスカイト材料の日差しのもとでの長時間使用を可能にするため、ルビジウムイオンを固溶させた結果、小面積セルで効率21.6%(平均値20.2%)、エレクトロルミネセンス3.8%を達成した。バンドギャップ1.63eV、開放回路電圧1.24Vの損失0.39Vは市販のシリコン太陽電池の0.4Vと同程度で、85度Cで500時間連続で出力を維持する。

 

また研究グループは熱的安定性を備えた有機ハイブリッドペロブスカイト材料でも効率19%を達成している(下図)。シリコン太陽電池が市場を牽引してきた太陽電池は、実用的なペロブスカイト材料の登場によって風力と並ぶ再生可能エネルギーの普及が加速すると期待されている。

 

下図に示すようにポリシリコン系太陽電池の効率は20%で頭打ち状態で、薄膜になると今回のペロブスカイト材料の効率に劣る。コストを考慮すれば優劣の差は広がる。

 

 

Credit: 2014 SolarPanel Stuff.com