Photo: climatecentral
MITの研究グループはLCF-91と呼ばれるLa、Ca、Fe酸化物を含むペロブスカイト(
La0.9Ca0.1FeO3-δ)膜に火力発電所から排出されるCO2ガスを通してCOとし、水素化して炭化水素としたり、水と反応させてアルコールとして炭素軽減とカーボンニュートラル燃料に使う一石二鳥となる秘術を開発した(Wu et al., ChemSusChem online Nov. 4, 2017)。
990CにおけるペロブスカイトITM(注1)の酸素選択性は100%で、酸素原子しか透過できない。CO2分子が透過する過程で反対側を真空にすると、結合の強いCO2分子から酸素原子が剥ぎ取られ(還元され)COが得られる。
真空の代わりに反対側に水素、水、メタンなどを吹き付けるとケミカルポテンシャルの傾きが増加してCO2還元反応が進む。CO2/H2Oの組み合わせではITMを透過すると還元されてCO/H2が取り出せる。
実測された流量は9.5%H2、11.6%COに対して0.191と0.164μmol cm-2 s-1であった。研究グループは天然ガス火力発電所の燃料ラインを分岐して、一つは燃焼させて発電、排出CO2を回収し、もう一方ではITMを通してシンガス(COとH2の混合)を製造する効率的な天然ガス利用法を考えている。40-50年先の化石燃料の枯渇前に炭素軽減と高効率化という両面で、この手法が期待されている。
(注1)Ion Transport Membrane
Credit: MIT
研究グループは排出されるCO2から炭素を回収するコストを見積もりスケールアップする段階に進みたいとしている。アイスランドでは地熱発電所から排出されるCO2を回収して、地中に貯蔵するプロジェクトが進行中であり、さらに海底貯蔵の可能性も検討されている。パリ議定書の排出規制が進まない現在、排出量の多い発電所でCO2を回収することが現実的になりつつある。
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