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世界最大の飛行場というと2016年旅客数ベースでは年間旅客数1億417万人の米国アトランタのハーツフイールド空港(ATL)である。2位につけているのは北京首都国際空港(PEK)、3位はドバイ国際空港(DXB)、4位ロサンゼルス空港(LAX)で羽田空港(HND)は5位。
ランキング上位の旅客数を支えるための空港施設にはそれなりの規模が要求されるのだろうが、旅客の至便性を両立させた空港は少ない。例えば1位のハーツフイールド空港の駐車場は車で迷子になったほど広いが、車で空港に乗り付けて駐車しておいて戻ったら車で帰る、以外のケースなど眼中にない。ダラスのターミナル間移動は空港内を周回する列車に乗らなければ無理、シャルルドゴールではターミナル間を移動するバスは苦痛である。
2016年旅客数ベースでは年間旅客数2位の北京首都国際空港はオリンピック前に改修を受け、その前に比べると大変立派になったが、それでも航空機の発着数が増えて手狭になり、世界最大の空港建設計画が進められている。
敷地面積が313,000m2となる北京新空港は2014年から建設が始まり、2019年に開港する。ターミナルはザハ・ハデイド氏設計の「星のイメージ」で5方向に中央からヒトデの触手のように伸びる。中央部を経て全てのターミナルが等距離に位置する至便性の高い空港となる。6つのうち5つのターミナルには全部で75箇所のゲートが設置され、カプセルホテルも含まれる。
世界中の国際空港は拡張性を考慮して設計されたダラス国際空港やシャルルドゴール国際空港でさえも平面的に継ぎ足されていくため、離れたターミナル間の移動は列車やバスとなり、乗り継ぎ客への配慮に欠けている。北京新空港のターミナル設計にはこのことを踏まえた大胆な発想によって5つのターミナル配置が中央から伸びた独特の設計(注1)になっている。
(注1)5つのターミナルは中国の文化を象徴する絹、お茶、磁器、農地、庭園の5つを象徴とされる。
北京の南46kmに建設されている新空港は東西方向に1.144km、南北に0.996kmの長方形で中央ホールから5つのコンコースが600mに渡って伸びる。地上階は国内線、最上階は国際線用であるが、国際線と国内線ターミナルが平面図では同じ場所なので、これも乗り継ぎに至便性が高い工夫である。
計画では4本の滑走路は一期工事に含まれている。空港の目玉となるのは不評だった北京市内への交通機関で、空港地下に北京市と同等の広さの高速鉄道駅が予定されている。なお上海空港は二つのターミナルの中間にマグレブ(磁気浮上列車)駅が、また同じく上海の上海虹橋国際空港は高速鉄道駅と隣接している。シャルルドゴール空港地下はTGV駅だしチューリッヒ空港地下に降りれば市内行きの列車に乗れる。国際空港の条件は市内との輸送手段が空港直下から利用できるのが望ましいので、北京から市内への移動は格段に便利になるだろう。
北京新空港は年間旅客数7,200万人、貨物200万トン、発着数620,000の世界最大の空港となる。しかし筆者の個人的に選んだベスト空港はコペンハーゲン、2位ワルシャワ、3位はチューリッヒ空港である。人混みの嫌いな筆者にとって手頃な規模で快適に過ごせる。旅客数ランキングと快適性・至便性は関連が低いのかもしれない。基本的にハデイドのデザインは好きになれないが、北京新空港が旅客数ではなく快適性・至便性でもランキングトップになることを期待したい。