低炭素電力の環境負荷~2050未来予測

12.12.2017

Photo: libdems.org.uk

 

低炭素社会あるいは水素社会構想の理念と裏腹に遅々として進まない排出規制だが、パリ議定書の定める2050年度が近づく中で未だに、達成の見通しがつかない。現実路線に沿って排出規制の方向修正を迫られる一方で、未来予測の精度を上げることも重要課題となりつつある。

 

ポツダム気候影響研究所の研究グループは長期サイクルでみた化石燃料と非化石燃料の温室ガス排気のライフサイクルアセスメント(環境影響評価)を行った。研究グループはエネルギー、経済、土地、消費、気候への影響を統合したグローバルモデルを構築して、未来社会の低炭素電力システムに関する環境影響評価の結果を公表した(Pehli et al., Nature Energy 2, 939, 2017)。

 

未来のライフサイクル排出量は技術に強く依存する。気候変動への影響を抑えた場合、2050年までに化石燃料のカーボンキャプチャを78-110gCO2eqkWh-1、原子力、風力、太陽光エネルギーの3.5-12 gCO2eqkWh-1と予測している。一方で水力、バイオマスのライフサイクル排出量は100gCO2eqkWh-1と不確定性が大きいものの際立って高い。これまで水力やバイオマスはグリーンエネルギーとされてきたが、実は製造過程も含めれば、それらの排出量は低くない。

 

Credit: Nature Energy

 

水力発電やバイオマス以外の低炭素電力の規模が拡大したとしても、その累積排出量は、化石燃料排出量および世界全体の総炭素収支と比較して小さい。また温室効果ガス排出量のライフサイクルを考慮すると、それらの(コストを最適化した)発電方式の規模への影響は少ないとしている。グローバルな低炭素電力システムのアススメントはライフサイクル全体を取り込んだモデリングが重要であることが示された。

 

 

この研究結果が指摘する重要な点は、温室効果ガス排出量のアセスメントで技術を選択する場合に、ライフサイクルすなわちエネルギーを利用する社会の上流から下流に至る一連のつながりを正しくモデリングする必要があること、排出量は低炭素電力の規模に対する影響は少ない、すなわち低炭素電力を採用すれば規模を拡大しても環境への影響が少ない。

 

下図はエネルギーライフサイクルの模式図。