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TV、電話、インターネット回線に使われるほとんどの通信衛星は商用ロケットで打ち上げられ、地球上高高度静止軌道で運用される。しかし高度は徐々に低下してやがては大気圏に突入して燃え尽きる。打ち上げコストもさることながら宇宙ゴミを増やさないために、欧州宇宙局(ESA)は高高度疑似衛星(HAPS)という概念を提案している。
高高度疑似衛星とは
HAPS(High-Altiude Psudo-Satellite)は成層圏で運用される衛星通信を置き換える通信支援の気球、飛行船、航空機、ドローンを指す。通信衛星に比べてメリットは低コストに地域ごとにWiFi環境を構築できることである。HAPSの運用高度は20kmで民間航空機の巡行高度(~10km)よりも高い。この高度からは500km以内がマイクロ波圏内となり容易にWiFi環境を構築することができる。
しかしHAPSはそれだけではなく、高分解能で地形を観測したり災害時の緊急連絡網を構築したり、多用途である。監視ヘリや偵察機を飛ばすことなく広域の監視ができるようになれば、山火事などの自然災害、航空機事故、テロ対策や暴動の監視にも効果を発揮する。例えば太陽電池をエネルギー源とした飛行船を定点に位置させて、通信衛星を低コストで置き換えられる。
ESAの提案に呼応して民間航空機メーカーもHAPSに向けて研究開発を行なっている。エアバス社は2010年に太陽電池航空機Zepherで無着陸14日間で世界一周に成功した。同社はその発展型として積載能力を高めたZepher-Tを開発中である。Alenia Space Stratobus社はHAPS飛行船を開発しており、2021年に初飛行予定である。
ESAの提案は民間航空機製造メーカーやスピンオフ・ベンチャーの雇用にも一役買うことは間違いない。自動車産業におけるEVのように従来の航空機カテゴリに入らない高高度疑似衛星の機材開発が活発化することで産業にも貢献すると期待されている。衛星打ち上げと運用コスト低減や雇用問題などの経済的理由と、移民問題で(北アフリカに面した海岸や地中海など)特定地域の監視体制を強化しなければならない欧州独特の事情もある。