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全世界で20億人が飲料水不足にあえいでいる。海水から飲料水を製造する海水淡水化技術は水資源の確保に重要である。モナッシュ大学の研究グループはこのほどMOFを用いてサブナノポーラス膜を開発し、従来の技術より高速に淡水化する技術を開発した(Zhang et al., Science Advances, 4 eaaq0066, 2018)。
現在、逆浸透法と呼ばれる浸透圧を利用した淡水化技術は淡水製造装置シェアの半分を占めている。しかし消費電力量が大きいため1/2から1/3に低減する必要がある。また水資源の確保以外にも鉱工業では汚染水を浄化するための浸透膜や、Liイオンバッテリーの電解質膜など、多くの分野で浸透膜の性能向上が求められている。さらに使用済みLiイオンバッテリーからLiイオンを回収し再利用するためにも有用な技術である。
研究チームはMOF(注1)を用いたサブナノポーラス膜を用いた逆浸透法で従来の浸透膜より高速にイオン透析が行えることを見出した。アルカリ金属イオンの超高速選択的輸送のために、MOF(ZIF-8およびUiO-66)でオングストロームサイズの窓およびナノメートルサイズの空洞からなるサブナノポーラス膜を開発した。
(注1)Kitaura, R., Onoyama, G., Sakamoto, H., Matsuda, R., Noro, S.- I. & Kitagawa, S. Crystal engineering: immobilization of a metallo Schiff base into a microporous coordination polymer. Angew. Chem. Int. Ed. 43, 2684–2687 (2004).
水和イオンから水分子を取り除く原理(下図)により、ZIF-8およびUiO-66サブナノポーラス膜のLiCl/RbCl選択性は~4.6および~1.8と高くイオン輸送速度も極めて高いことがわかった。この膜の特徴は①イオン選択性と②超高速イオン輸送を可能にするイオン水和物から水分子を脱離するプロセスである。研究チームは分子動力学的なシミュレーションによってメカニズムを明らかにしタコとでMOFサブナノポーラス膜による超高速イオン透析が実現するものと期待されている。
Credit; Science Advances