地震をP波より早く予知する重力波

04.12.2017

Credit: GOCE

 

地震発生によって、震源を中心に外側に向かって振動が地震波となって地面を伝わっていく。地震波にはP(Primary)波とS(Secondary)波がある。P波の方がS波より速く伝わるため、地震波の伝搬速度の差を利用して、先に伝わるP波を検知した段階でS波が伝わってくる前に地震の脅威が迫っていることを知らせるのが緊急地震速報である。

 

一方、地震発生に伴って地球の重力場が変動することを利用すれば、重力波の伝搬は光速度であるためP波観測より早く地震規模を予想することができる。CNRSを中心とした研究グループは最新の研究で、観測される重力波の観測から地震規模を推定できることを明らかにした(Vallee et al., Science 358, 1164, 2017)。

 

地震波の伝搬速度は数km/秒であるので震源から1000km離れた観測地では2分程度前に地震予知が行えることになる。日本では全国約270箇所の地震計に加え、防災科学技術研究所の地震観測網(全国約800箇所)を利用して、緊急地震速報が送信されるので、その精度は高い。

 

これまでに重力波が地震で影響を受けることは、日本の地下500-3000kmに設置された10箇所の地震計が観測した2011年の311地震のデータを解析して論文(Montagner et al., Nat. Commun. 7, 13349, 2016)で発表されていた。研究グループは同じデータをより詳しく解析し、重力場の変化の二つの成分を見出した。

 

一つは地震計の質量の平衡位置を変化させる地震計付近の直接的な変化であり、もう一つは地震波発生に伴う地球の重力場全体の変化である。これらの成分を考慮して解析すると正味の重力波の変化は地震の規模に敏感で、地震規模をP波観測に頼らず決定することが可能になる

 

311地震の規模はM9.1であったが、将来的には8.5以下の地震に適用することが課題となる。重力波観測施設は米国のLIGOや日本のKAGRAなどが観測を競い合っており、LIGOが世界で初めて、ブラックホールの合体から発生した重力波を検出した。地震学の最先端は重力波研究と重なることとなり、地震速報のために重力波研究設備が使用されることになるかもしれない