Photo: bgs.ac.uk
新生代後期にあたる約500万年前から約258万年前までの鮮新世の気候変動は将来の地球の気候を予想する上で、重要な手がかりになる。クレムゾン大学の研究チームは270万年前(新生代後期)の寒冷化が起きた原因はアジア大陸から巻き上げられた大量の塵が、北太平洋にかけて上空を移動したことが原因とする研究結果を発表した(Nie et al., Science Advances 4, eaao6977, 2018。
研究チームは大陸の乾燥化そのものよりもその結果として塵が海洋に運ばれて降雨によって、海洋に成分である鉄分が増大する効果に注目した。鉄分を含んだ海水は海洋植物の成長を促進し、光合成が活発化して大気中のCO2が海水に取り込まれることになる。塵が太陽光を反射すれば地球に到達する熱量が減少すると同時に温室効果の減少で寒冷化することになることが予想される。
Credit: Science Advances
この研究で研究チームは現在の中国の黄土高原の極端な乾燥によって生じた塵が、海洋に移動したことが気候寒冷化につながったとしている。降水量に基づく浸食が北太平洋への塵の移動を増加させたことが、新生代後期の気候冷却に重要な役割を果たした。
乾燥によって吉林山脈や東アジア低地は侵食され、夏季降雨量の増大による降水量の変化など、その影響が広範囲に及ぶと考えられている。地球全体に及んだ気候寒冷化を理解するため、研究チームは鮮新世の気候が世界各地でどのような状況であったかを調査する予定である。
ジオエンジニアリングは高空に微粒子を噴霧して太陽光を反射させて、地球表面の照射量を人工的に減らす計画である。すでに世界各国で化学物質が航空機から噴霧されている。最新の研究によれば本格的なジオエンジニアリングが一旦実行に移されたら、中断すれば生態系に深刻な影響が出るとされる。
地球気候変動の理解が不十分なままで、政治的な力学や一部の利益のためにジオエンジニアリングを強行するのは愚かな行為である。
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