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7X7シリーズの最後となるボーイング797といえば旅客機としては革新的な、ブレンデッドウイング(Blended Wing)と呼ばれるデルタ翼機構想が知られていた。機体の大型化が進むと強度の関係で主翼と胴体が一体化されたブレンデッドウイングが有利となり、さらに抵抗の少ないため燃費も向上するので、大型機の新しい方向性を示す画期的なデザインであった。
NMA/NSA
従来の旅客機と一線を画するこの企画は、ボーイングに合併したマクダネルダグラス社出身の技術者の主張であったが、ボーイング社はあえて冒険はせずにナローボデイ機の737と新鋭ワイドボデイ機787の中間的ないわゆるミドルマーケット(NMA: New Market Airplane)をターゲットとした手堅い797を考えている。
具体的にはサイズはナローボデイ737とワイドボデイ787の中間となり、国際線運用が可能な機種となる。現時点ではボーイング社はNMAの他にNSA(New Small Aircraft)として検討中のようだが、NSAとしては737 MAXが先行しているので、NMAよりの可能性が高いと思われる。いち早くユナイテッドが国内線向けに797に興味を示している。
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737はA320と並んで国内線および中・短距離国際線に運用されているナローボデイのヒット作である。NSA/NMA 797は胴体の拡張によって通路が1本の3-3配置と通路が2本の1-2-1配置を選ぶことができる。ほぼエコノミーシートとなるこのクラスでは3-3配置の方が旅客数を増やせる反面、1-2-1配置の方が乗り降りが速くサービスもしやすい。
最大離陸重量(MTOW)は64トンと114トンの2機種を用意するとされるが、詳細は未定である。737に比べてカーゴ積載をA320と同じAKH方式を採用するとみられるので、737で不満のあったチェックイン荷物の迅速な受け取りが可能になる。
革新より市場優先
先進的なブレンデッドウイング機は7X7シリーズでは実現できなかった。それだけ市場が細分化され、隙間を狙う戦略が優先されたことになる。ワイドボデイにナローボデイのシート配置でも快適性は向上するだろうが、先進的な機体を機体していた向きには少し残念な797ではある。個人的には737もA320もいまでは古い機体になったが、787のような複合素材の機体より着陸時に機体剛性を感じられて、軽快感が気にっているのだが、797は複合素材となるのは避けられない。新しい試みを率先して使うエアバス社に対して、保守性が強くなったボーイング社だが、逆に言えば牙城であった100名以上のすべてのクラスをエアバス社と競合することになり、米国の政治圧力も減少して競争が激化して守りに入ったということだろう。
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