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CO2排出量大国である米国と中国は法的規制を実行する可能性が低いが、米国のパリ議定書からの脱退でCO2排出量削減交渉は暗礁に乗り上げた。一方、制でも先行する欧州では、大気中のCO2を集めて地中・海底に貯留する技術開発が活発化しているが、貯留の安全性については慎重な検討が必要である。
EUはこのためプロジェクト研究で油田・ガス田が設置されている沿岸でのCO2海底貯留の安全性を検討し、海底貯留に適した地域と監視システムを考察した。進まないCO2排出規制に変わる大気中CO2除去と貯留で実質削減を目指すことになる。
Credit: STEMM-CCS
STEMM-CCS
STEMM-CCS(Strategies for Environmental Monitoring Carbon Capture and Storage)と呼ばれるこの研究は英国の研究グループによって行われ、論文として公開されている(Alendal, J. of Geophys. Res. online July7, 2017)。研究では海底貯留からの漏洩を検出して漏洩場所を無人潜水艇で特定する手法を提案している。
漏洩の検出は海洋生物起源か漏洩によるかを識別する必要があり、海洋と大気の状態に強く依存している。潮流の変化などの時々刻々変動する海洋に対応する自動潜水艇(下図)でガス漏洩を瞬時に検出できる。
Credit: STEMM-CCS
データが得られれば統計的手法(ベイズの定理)で漏洩箇所が特定される。STEMM-CCSでは自動潜水艇モニタリングで北海を調査し、最適な貯留場所の決定に役立てる。海底貯留の安全性が確立すれば、現実性のない排出量規制に変わる実質的なCO2削減となり得る(注1)。
(注1)トランプ政権がパリ議定書を脱退する最大の理由は、急ぐ必要のないCO2削減を大義名分にして、削減交渉が先進国から税金を取って後進国へ配分するしくみを強要するからである。パリ議定書に参加国が多い理由もここにある。排気量が小さければ税金が還元されるからである。早々と内燃機関から脱却を宣言し、削減に最も積極的なEUの狙いもそこにある。