Photo: NASA JPL
まるで地球温暖化に矛盾するかのように、極渦と呼ばれる極地からの冷気乱流の影響で北米大陸南部は異常な寒波に見舞われている。例年、冬から春にかけては南東部上空に暖気がとどまるが、極渦(注1)が流れ込んで寒冷化を引き起こしている。
(注1)極渦(Polar Vortex)は北極と南極上空にできる寒気の渦。
ダートマス大学の研究チームの研究によると米国南東部の暖気ポケットの寒冷化は大西洋と太平洋の気温の変化の影響が大きく、地球平均気温の上昇と逆に低下していることがわかった(Prtridge et al., Geophys. Res. Lett. online Feb. 06, 2018)。研究によると1950年代から米国上空のジェット気流が「暖気ポケット」の出現とともにうねる「極渦」現象が見られるようになった(下図)。
Credit: Trevor Partridge
今回の研究では1901年から2015年の期間に測定された1,407箇所のNOAA気温データと1,722箇所の雨量観測データを分析して、特定の観測場所の気温が平均気温より低いこと、すなわち寒冷化していることが明らかになった。1958年に比べて日中の暖気ポケットが平均気温より最高気温で0.46度(C)、最低気温で0.86度(C)低下しているのである。
米国上空の暖気ポケットの位置が季節に依存して移動することが寒波に強く影響している。ジェット気流がうねる極渦によって今年の米国南東部の寒冷化は説明できることがわかった。暖気ポケット上空の局所的な気温は地球平均気温上昇傾向と矛盾する結果となった。
この研究は地球の平均気温の傾向と局所的な気温が相反する場合があることを示しており、世界の気温変動を地球平均気温に代表させて議論することの危うさを警告している。地球紀行の変動を議論するためにはビッグデータ(長期間の局所的な変動データ)の解析が不可欠である。