Photo: research.fiu.edu
未来の地球がエネルギーや食糧危機を迎えることは明らかだが、抗生物質が無力化することによる感染症で人類が滅亡の危機に瀕することも憂慮する必要がある。身近な存在である藻は遺伝子編集によって新薬や燃料としてこれらの危機から地球を救うかもしれない。すでに藻は食料や化粧品の原料としての応用が始まっている。
本格的な藻の食料や化粧品の原料への応用は遺伝子編集ツール(CRISPR)の進歩で現実味を帯びてきた。エジンバラ大学の研究グループは藻の遺伝子編集技術を改良し、新薬開発への応用を目指している(Ferenczi et al., PNAS online June 12, 2017)。
研究グループは藻へのCRISPR適用の効率を上げる工夫を開発した。この手法ではDNAを切断して短鎖DNAとして、藻の細胞のDNAを直接編集することができる。この新しいCRISPRによって編集効率を従来の500倍に増加させることができ、2024年度までに藻の応用で11億ドル相当の経済効果をあげられる見込みである。
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研究グループが開発した遺伝子編集技術は代表的な藻であるChlamydomonas reinhardtii(上のイメージ)の多くの種類に適用できる。将来的には食料となる藻の収量を増やしたり、植物の病気や気候変化に耐性をもたせたりすることが可能になる。この研究で開発された遺伝子編集技術で藻を使う食料、エネルギー(燃料)、薬剤の開発がより効率的に進むものと期待されている。藻が地球の危機を救う存在になる日が近いのかもしれない。