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発売されたばかりのハイエンドスマホ頂点に立つアップル社の iPhone Xは999ドルからという破格の価格となった。製造コスト(TechInsight)は357ドルで64%の利益をもたらすXは普及版8より25%製造コストは高くなるものの、43%増しの価格で販売する(ロイター)。8は699ドルからで利益率は59%となる。製造コストを抑えられた要因は例によってフォックスコンへの水平展開である。
ハイテク製品が月日を重ねるにつれて部品コストが下がるために利益率は増大する。普及型の8は技術的には7Sに相当し基本的なところは2014年にリリースされた2世代前の6と同じ。Xは画面表示に有機EL(Super AMOLED)を曲げてベゼルレスとしタッチIDの代わりに顔認識機能(フェイスID)を搭載している。
アップルは自社製品をプレミアブランドとして製造コストをフォックスコンに委託して低く抑える一方、キャリアを通じて販売しても高額な価格を維持することで知られる。8の画面は従来型のバックライトLCDで筐体もアルミ(21.5ドル)に対し、XではELかつ筐体もSUS(36ドル)と高価な部品も使われている。
しかし製品ラインアップをよくみればXの999ドルはエントリーモデル(64GB)で実用的には128GBモデルが欲しいところだが、ユーザーはこのモデルを選ぶことができずに、選べるのは256GBモデルとなり価格は一気に1,149ドルに跳ね上がる。先進的な機能に惹かれてXを購入するのはハイエンドモデルを購入するユーザーなので、256GBモデルを購入するにちがいないという姑息なマーケッテイングの値段のつけ方も良心的とは言い難いが、問題はそこではない。
問われるモラル
タックスヘブンで脱税を重ねるアップルにEUの反トラスト局は、アイルランドがアップル社に対し違法な課税優遇措置として最大130億EU(約1.5兆円)の追徴税納付を命じ、法廷闘争になっている。
問題は理念を持って社会を変えていこう、という高い志を持つ企業の、お抱えの法律事務所を通じて高利益率で稼ぎ出し、タックスヘブンで脱税をするという姿勢にある。壮大なスケールのクパチーノ本社ビルを建設し、時価総額一兆ドル越えも目前に控えたアップル社だが、EUの追加税納付やパラダイス文書の暴露により帝国の闇の部分が明らかになりつつある。「本社ビルを建て替えたら注意しろ」というのは正しいらしい。その辺によくある「普通の会社」になった、ということなのだろう。
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