トランプ大統領就任式を前に、トランプ氏はアメリカを再び超国家を構築することによって偉大にするビジョンを提唱し、世界を驚かせた。それには、グリーンランドの購入、カナダを51番目の州に、メキシコを52番目の州に、メキシコ湾をアメリカ湾と名称を変更、パナマからパナマ運河を取り戻すという発言であった。
このような壮大な構想を持ち出したのはトランプ氏が初めてではない。2006年にはジョージ・W・ブッシュが米国、カナダ、メキシコの3カ国による総合体の構想、北米連合を設立したが発展はなかった。1993年にはビル・クリントン政権下で米国、カナダ、メキシコによる北米自由貿易協定が結ばれる。これは単なる貿易協定ではなく、地域の安全保障と経済発展を目指す新しい国際システムであることが提唱された。トランプ氏は更に踏み込んで、カナダとメキシコ両国の国家主権を排除してアメリカ合衆国の一部となることを試みている。
これまでのカナダとメキシコの合併構想に加え、トランプ氏は国家安全保障、資源の獲得、貿易ルートの確保を目的にグリーンランドとパナマ運河の獲得を計画している。グリーンランドの獲得を試みるのもアメリカ大統領としてトランプ氏が初めてではない。トランプ氏は4人目となる。
1867年には第7代大統領アンドリュー・ジョンソンがグリーンランドの獲得を考えた。1910年には第27代大統領ウイリアム・タフトも試みた。更に1946年には第33代大統領ハリー・トルーマンがデンマークがナチスドイツ支配下から独立した際に話を持ちかけた。それは、第二次世界大戦中デンマークがナチスドイツの支配下にあり、グリーンランドが他の国、特にナチスドイツによる占領を阻止するため、アメリカはグリーンランドに米軍基地を置き占領していたことからグリーンランド獲得に発展したのである。
パナマ運河は1904年にアメリカが10年かけて当時の最新技術で建設した世界最大の運河である。1999年にカーター大統領はパナマに運河の管理権を引き渡し、その後カーター政権の政策失敗の一つとも言われている。
トランプ氏がパナマ運河の管理権を求めるのは、パナマ運河が大西洋と太平洋を結ぶ戦略的航路であるからである。貿易面で、米国のコンテナ船の約40%がパナマ運河を通過している。近年コンテナ船に課せられている航行料の高騰が問題となっている。軍事面では、軍艦が大西洋と太平洋の間を最短で移動できることが安全保障上重要である。