トランプ大統領のアメリカを再び偉大にするビジョン Part 2

2025/2/2

  トランプ大統領が目指す世界最大の国土とロシアや中国を超える資源国になる野望は、今では、ドンロー・ドクトリンとも呼ばれている。当然のことながら、アメリカとカナダ、メキシコ、パナマ、特にデンマークとの間で状況が深刻になりつつある。

 ドンロー・ドクトリンは1823年のモンロードクトリンの拡大版ともいえる。モンロードクトリンは西半球全体、北アメリカ、南米、カリブ海の島国を米国の「裏庭」とし、ヨーロッパ諸国からの干渉はアメリカに対する侵略行為とみなした。トランプ大統領の外交政策の概念である「自国の利益や国力を強める」、「世界を守る」ためには、NATOの「裏庭」で積極的に介入することを問題としていない。しかし、ヨーロッパ諸国にとって侵略行為と解釈されてもおかしくないのである。

 

 トランプ大統領はグリーンランドの獲得を巡りデンマークに政治的圧力をかけ続けている。その結果、デンマークはグリーンランドの防衛のため防衛費を20億ドル増やすことを決定、反トランプ連合の設立をヨーロッパ諸国に呼びかけており、トランプ外交政策に反対するヨーロッパ諸国の団結が進んでいる。

 

グリーンランドの重要性
 グリーンランドの所有をアメリカの未来にとって「絶対的に必要」と述べるトランプ大統領。そう考えるのは、グリーンランドにはアメリカ産業の国際競争力を優位にする重要で豊富な鉱物資源があるからである。

 

 現在、中国は世界のレアアースの生産の70%と加工の90%を占めている。電気自動車のバッテリー、光ファイバーやケーブル、携帯電話、コンピュータ、風力タービンなどの生産に必要なレアアースは中国一国が世界に独占的に供給している。そのため、中国は地政学的な優位性を保っている。

 

 グリーンランドをアメリカの支配下に置くことで、レアアースのサプライチェーンを構築、中国への依存を無くすことができる。さらに、グリーンランドには原子力用述に不可欠な大量のウラン鉱床があり、カナダやオーストラリアなどの輸入に頼る必要がなくなる。

 

 テスラ社のイーロン・マスク氏を含む主要IT経営者が急にトランプ大統領の支持にまわったのは、今後の経済社会基盤のデジタル化に不可欠な資源の獲得に期待を寄せているからである。

 

 防衛面では、北アメリカ航空宇宙防衛司令部 (NORAD)にとって、グリーンランドはアメリカとカナダの航空と宇宙の状況を監視する必要不可欠な場所である。北アメリカにとって危険な状況、特にロシアからのミサイル発射などを早期発見することができる。グリーンランド上空はロシアにとって最短距離でミサイルを北アメリカに到達させることができるため、特に冷戦時代以降グリーンランドは安全保障面で重要視されてきたのである。

 

今後、トランプ大統領の交渉力が試されることになる。