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トランプ政権は議会に対して2015年にオバマ政権時にイランと合意した核開発問題の条項を継続するよう求めた。これにより核開発を凍結する代わりに経済制裁を撤廃が継続される。しかしテイラーソン国務長官はトランプ政権が実行内容案を全面的に見直すことも明らかにした。
テイラーソン国務大臣はイランが、様々な手法で依然としてテロリズムを支援しているとして、国家安全保障会議(NSC)主導で実行案の見直しに入るとした。またイランが合意内容を忠実に実行しているかどうかの評価を90日ごとにに議会に提出するとしている。
大統領選以前のトランプ候補はオバマ政権がイランとの合意を強く批判していたが、今回の継続措置は合意を破棄してより制裁を強める方向性と矛盾する結果となった。このことは国連の監視団がイランが核開発の凍結を遵守しているとした報告を尊重したと取れる。
それでもイランは反イスラエル団体を支援し、人権を無視する国家でシリアのアサド政権を支持するとして経済制裁の対象国のままに置かれる。
核開発凍結と引き換えにした経済制裁の撤廃は18カ月に及ぶ交渉の末に、2015年7月にウイーンでケリー国務長官、国連安全保障委員会、英国、中国、フランス、ロシアの代表によって合意にこぎつけた。イスラエルはこの時、核開発を先送りするだけだとして合意に反対した。
敷居の低くなった原爆製造への道
核開発(原爆製造)にはふたつの道がある。天然に存在するウランを濃縮するウラン型と原子炉で副次的に生産されるプルトニウムを用いるプルトニウム型である。イランが進めていたのはガス拡散法によるウラン濃縮(トップ写真)であった。この方式での核開発はウラン型原爆であるが、これには大規模な工場が必要なので秘密裏の開発続行は難しい。
核武装へのもうひとつの道はプルトニウム型原爆である。プルトニウム製造には安全性に問題のある黒煙型原子炉が必要なので、米国は査察でイランが黒煙炉を建設することは阻止するだろう。しかしプルトニウム製造ができない軽水炉を与えた北朝鮮が核開発を進めてしまった。
またイスラエル、中国、インド、パキスタンに続いて核保有国になろうとする北朝鮮とイランの核武装を止められない状況にある。核開発の技術的な敷居が低くなったことの他に核兵器製造の技術移転がハッキングや人的ネットワークで容易になったことがある。制裁を武器に交渉するCTBTが時代遅れになりつつあることを認めなくてはならない。