フィンランドで最低所得の実験的実施が始まる

7.01.2017

Photo: theweek

 

 フィンランドは1月1日から市民2000人を対象に、ヨーロッパ初の「ベーシックインカム」(統一最低所得)を試験的に始めた。参加者は成人1人につき月額560ユーロ(約6万9000円)が支給される。このプログラムは2年間続き、参加者は失業手当又は生活保護を受けている25~58歳の失業者から無作為に選ばれた。

 

 フィンランド政府は、「ベーシックインカム」で貧困当事者への支援、雇用状況の改善、現給付制度を廃止し「ベーシックインカム」に一本化する財政コストの削減策として導入を2年間検討してきた。特に、8.1%と高い失業率は、現給付制度が大きく影響しているとされる。

 

 

 現失業手当や社会保障制度では、収入の上限制限がある。収入額で受け取る社会保障額が減らされるのに対して、「最低所得」制度では、収入とは関係なく決まった最低所得を受けることが保証される。支給額を受け取りながら正規雇用、自営業、パートタイムの仕事や臨時の仕事をすることも可能となる。

 

 「ベーシックインカム」制度の導入は、将来ロボットに奪われる雇用の問題の対応策としてAI業界、ITO産業からも注目されている。テスラ・モーターズ、スペースX社CEOのイーロン・マスク氏はロボットによって失われる雇用の対策として好ましいと発言したが、フインランドの実験の規模が小さいため、「ベーシックインカム」制度全般の評価を下せないとする懐疑的な意見もある。

 

 財政面では、現在のフィンランドの社会保証制度では、給付額はGDP の31%を占め、財政負担は拡大を続けている。制度の導入はフィンランド政府の他、リベラル派から保守派政党まで支持されている。

 

 2016年にDalia Researchが実施した世論調査では、68%がベーシックインカムの導入を「確実に支持する又は多分支持する」と答えている。2016年4月に実施した世論調査はEU参加28カ国、1万人を対象としたものである。

 

 試験的のプログラムが成功すれば、2018年には「ベーシックインカム」の支給対象者を大幅に拡大、最終的にフィンランドの全国民を対象に制度の導入を検討している。