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歴史に残る不吉な3月15日といえば、シェイクスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」のなかで、カエザルは占い師から「3月15日にご注意」と忠告されることでよく知られている。占い通りカエザルは紀元前44年3月15日に暗殺され、その死はローマ帝国は崩壊に向かうターニングポイントとなった。来る3月15日は、世界経済とEUの行方を左右する4つのイベントが重なる。
アメリカの債務上限問題
毎年議会で再燃する債務上限枠の引上げ問題。2015年に大統領選挙中に債務上限問題を避けるため、2017年3月15日を期限に政府債務の上限引き上げを盛り込んだ予算案が議会で可決された。3月15日に期限を迎え、トランプ大統領は債務上限問題に直面する。
そのため3月15日時点の債務残高(約2兆ドル)が上限となり、国債発行枠を引き上げない限り、債務不履行の状態に陥る。ムニューシン財務長官は期限の延長、債務上限の引き上げがあるまで臨時の財務措置を適用するとしている。しかし、その措置も8~9月までが限界で、それまで債務上限の引き上げがなければ、債務不履行の危機が現実となる。
トランプ大統領は就任してから公約の財政健全化に向けて、債務残高を19兆9450億ドルから19兆8790億ドルへと約0.3%の削減を果たした。しかし、トランプ政権の減税、防衛費の拡大、総額1兆ドルになるインフラ投資の諸政策では、債務上限引き上げが必要不可欠となる。民主党や財政改善を求める一部の共和党議員からの反対で混乱する恐れがある。
米 FRBによる政策金利の引上げ
米連邦準備理事会(FRB)は3月15日に政策金利の追加利上げに関する発表を予定している。市場予測では、利上げが実施される可能性は90%と高い。しかし、新大統領が就任して間もなく経済を不安定化する可能性がある政策金利の利上げを実施するのはこれまでないことである。また、債務上限問題が発生する同じ日に利上げを発表することには、政権内や市場に混乱を引き起こすリスクが大きいタイミングともいえる。
英国のEU離脱の正式通告
テリーザ・メイ首相は3月15日にリスボン条約の第50条項を行使、正式にEU理事会に英国のEU離脱を通告することで離脱は法的に決定される。この時点から、英国は2年間、EU離脱に向けての脱退とEUとの新たな関係の枠組みの創設の協定交渉に入る。
交渉の難関となるのが、EU市場へのアクセス、ECBとの負債の清算、NATOや国家安全保証などで、いずれも経済・政治面で混乱を引き起こす要因となる。EU離脱に伴う離脱交渉の結果はEU離脱を検討中の国々に大きな影響を及ぼすことになる。
オランダ総選挙
欧州で深刻化している移民問題は、オランダ有権者の間でも関心は高い。実に有権者の80%は移民政策に懸念を示しており、86%は移民によりオランダの伝統的な道徳や価値観が低下していると答え、移民の排斥への支持は高い。反イスラム、反移民、反EUなどの政策を掲げる極右政党「自由党」は支持率を集めていて、現連立政権を率いる自由民主党の支持を上回る勢いを示している。
ウィルダース党首が率いる自由党が躍進すれば、このあとに行われるフランス、ドイツの国政選挙で反移民、反EU政策を掲げる右政党に勢いをつける結果となるだけに、選挙の結果が注目される。英国離脱に続き、EUの行方を大きく左右する選挙となる。