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2016年に早急の対応を求められたイタリアの銀行の不良債権問題。今年に入ってからの報道の少なさから、銀行の資本強化で危機的状況から脱したと考える人が多い。しかし、最近の調査で現実はその逆で、より悪化した「ゾンビ銀行」が急増していることが判明した。
テキサス・レシオで見るイタリアの銀行
銀行の健全性を表す指標のひとつのテキサス・レシオ又はゾンビ銀行指数は、銀行の不良債権残高における有形自己資本と損失割り当て準備金の割合を指す。失う可能性の高い資産(不良債権)に対してどれだけの資金を準備することができるかを示し、銀行の不健全性を数値化したものである。
テキサス・レシオの数値が高くなるにつれて、経営が危ない状況になっているといえる。この数値が100%を超えると、失った資産を現在準備している資金では補填できなくなるとして、銀行に早急な対策の必要性を促す警告となる。150%を超えると、膨らみすぎた不良債権により破綻状態に近いと判断される。しかし、破綻状態にあっても、モンテ・パスキ(モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行)のように政府の支援で経営を続ける銀行があり、これらの銀行はゾンビ銀行と呼ばれている。
テキサス・レシオ100%を超える銀行
イタリアの銀行メディオバンカの最新調査で明らかとなったのは、イタリアの商業銀行500行のうち114の銀行はテスサス・レシオ100%を超え、200%を超える銀行が24行あること。多くは小中規模の地方貯蓄銀行や信用組合ではあるが、イタリアや欧州の金融システムに大きく影響を及ぼす大手銀行も含まれている。
テキサス・レシオの高い大手銀行
Unipol Banca 380%
Monte dei Paschi di Siena 263%
Veneto Banca 239%
Banco Popolare 217%
Banco Popolare di Vicenza 210%
UBI Banca 117%
Banca Nazionale del Lavoro 113%
Banco Popolare Dell’ Emilia Romagna 140%
Banca Carige 165%
イタリア最大の銀行Unicreditと2位のIntesa Sanpaolo もテキサス・レシオが90%を超えている。明らかに、多くのイタリアの銀行が破綻危機にあるにも関わらず、不良債権問題の対策は進んでいない。EUがどのようにイタリアの銀行の不良債権問題を処理するかは明らかにされていない。4-5月にフランス大統領選挙、9月にはドイツ連邦議会選挙を控えていることから、選挙が終わるまで対処策の方針が決まらない可能性がある。だが、イタリアの「ゾンビ銀行」が破綻状況のなかで、それまで持ちこたえられるかは疑問である。