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フランス国籍の身分証明、パスポートを持つフランス人、約6000万人を対象に、既存の各個人情報のデータを一本化する、Titres Electroniques Securises (TES:電子身分証明書)巨大データベースへの登録が義務づけられた。2月21日からヴェルサイユ宮殿があるイヴリーヌとブルターニュ地区で、3月末までには、フランス全土の国民が対象となる。
2016年10月にフランス政府は、議会審議を行わないまま、TESデータベースを創設する政令を発布した。12歳以上のフランス国籍の人は、TESのデータベースに登録され、身分証明に関する情報は20年、パスポートに関する情報は15年間保管される。個人の氏名、住所、生年月日、性別、顔写真、目の瞳の色、指紋といった生体情報、体重、結婚歴、職歴、銀行口座などの個人情報が一カ所のデータベースに集められることになる。
仏政府は過去3回、国民の個人情報のデータベースの創設を試みている。最初は1940~1944年のナチス占領期間、1978年には政府が内密に進めていたデータベース化が発覚し、その結果、データ保護当局の情報処理および自由に関する国家委員会(CNIL)が設立された。2012年には計画が仏国務院(最高行政裁判所)によって却下されている。
仏政府は複数の個人情報のデータベースを統合することで、効率化と身分詐称を防止できるとしている。しかし、今回も国民議論や議会での審議がなく、政令で発布していることが今後問題化する可能性は高い。ハッキングのリスクや個人情報の悪用や乱用が懸念されるため、CNILとテジタル技術に関する諮問機関である仏デジタル評議会(CNNum)が安全性に懸念を示し、政令の停止を求めている。
国家財政が悪化するフランス政府にとって、国民の経済活動が監視できるだけでなく、税収源の確保にも役立つことは間違いない。テロや暴動で社会不安が増大している背景は、政府が国民を説得しようとする際に安全保障という大義名分で正当化しやすい背景がある。