ボーイング社の対イラン輸出契約を議会が差し止め

27.11.2016

Photo: airwaysmag

 

国営エアラインであるイラン航空は所有している機材が就航26年の老朽機だが、イランへの経済制裁のため新機種を導入できずにいた。イラン航空は現有のボーイング747クラシック、エアバスA310を777、A330に置き換える構想を持っており、ボーイング社機種購入交渉を行っていた。

 

米国下院はこのほど軍事転用が可能な航空機の輸出契約を差し止める法案を可決した。これによりイランがボーイング社と結んだ250億ドル(日本円で約2.7兆円)の購入契約が差し止められることになる。

 

 

購入差し止め法案が可決

この法案でボーイング社とエアバス社はイランへの航空機輸出ができなくなる。また航空機購入費用が多額となるため購入には(米国内の)民間の融資が必要である。イランへの航空機輸出の民間融資も禁止されるため、外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control)の認可が受けられなくなる。

 

この法案は上院で否決されるか撤回の法案が可決されない限り、法的に有効となりボーイング社にとっては大きな痛手となる。しかし上院も否決される見込みは少ないため、実行される可能性が高い。法案はイランと米国の交易復活のシンボルとなるはずだったボーイング社とイランの大型契約後1週間後に明らかにされた。

 

 

250億ドルの契約は成立すれば1979年のイスラム革命後の最大の貿易となるはずであった。今回の法案でイランへの制裁解除にも関わらず、航空機輸出が依然として制裁下にあることが示された。イラン側も今回の法案が米国内の問題で国際的に承認されている制裁解除と矛盾するとして反撥している。

 

ボーイング社のライバルであるエアバス社も2016年1月にトップセールスでイランとの間に112機の大型契約を結んでおり、外国資産管理局の承認手続きを終えようとしていたとコメントした。エアバス社の契約に(米国の)外国資産管理局の認可が必要な理由は機材の一部に米国部品が使われているためである。

 

 

法案可決の背景

今回の法案成立の背景にはイランがテロ活動を支援しているとする政治的な理由がある。法案の提案はテロ活動がイスラム国家の支援を受けたものである限り経済的交流はあってはならないと考える議員によるものであった。

 

なおイラン航空655便(エアバスA300)が1988年7月にホルムズ海峡で米国海軍のミサイル誤射により撃墜され、290名が犠牲になっている。イランへの経済制裁はテロ国家への制裁と置き換えられて、今後も続きそうである。しかし他国の領海内で民間機を撃墜し、テロ組織への武器を提供してきたのも米国である。

 

またボーイング社や他の軍需企業からクリントン財団への多額の寄付が商談前後で行われた。ヒラリー・クリントン氏は国務長官中、20カ国に総額1,650億ドルの軍需売買取引を成立させた。その中には、テロ組織を支援している湾岸諸国が含まれている。今回の法案可決はボーイング社のクリントン財団を通じたロビー活動が大統領選後に機能しなくなっていることを示唆している