Photo: business review
モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)による50億ユーロの資本増強の自力再建計画は、欧州中央銀行(ECB)が設定した期限(12月22日)までに達成できず、失敗に終わった。ECBは資本増強期限の延期許可を与えなかったため、イタリア政府は22日に公的資金による銀行救済に踏み切った。
カタール投資庁の支援期待できず
モンテ・パスキの再建計画で重要な役割を果たすアンカー・インベスター(主要機関投資家)に、カタール政府系ファンドが引き受けると期待されていた。モンテ・パスキは、カタール政府系ファンドの約10億ユーロの投資とアンカー・インベスターとして、他の機関投資家による投資資金を呼び込むことを見込んでいた。そのカタール政府系ファンドが出資を取り止めたことで、アンカー・インベスターが不在となり、増資が困難な状況となった。
モンテ・パスキ救済の緊急法令
モンテ・パスキの流動性ポジションが急速に枯渇している。今年の1月~9月には14億ユーロ、総預金の約11%が解約されて、今後預金の解約は増加するとみられる。特に、注目を呼んでいるのが増加している中小企業の顧客解約である。
さらに、10億ユーロの預金が今後解約された場合、モンテ・パスキはECBの最低基準の流動性を維持できないとしている。その危機感からイタリア政府は、モンテ・パスキ救済の緊急法令で公的救済を発令した。
約200億ユーロの銀行救済資金で、モンテ・パスキを中心に流動性の低い他5行に資金が投入される予定である。政府は銀行救済と同時にイタリアの銀行への投資家不安を回避することを目指している。
イタリア政府は、モンテ・パスキの救済で、現在保有している株式4%を50%から70%にまで引き上げ、実質的に国有化する方向である。EU規定のベイルイン制度がどの程度導入されるかは未定であるが、モンテ・パスキの株主や劣後債保有者が損失を負わない状況が避けられるかは難しいとされる。イタリアがベイルイン制度を導入するかの決断で、EUの将来の方向性が決まると思われる。