司法に委ねられるクリントン氏

19.11.2016

Photo: Japan Times

 

 トランプ時期大統領が、米司法長官にジェフ・セッションズ上院議員を指名したことで、8年間のオバマ政権の政策路線の転換を迎えることになる。セッションズ氏の指名で、トランプ氏がアメリカの有権者との選挙公約の実現に向けて、その意思を示した。

 

 ジェフ・セションズ上院議員は、法律家、検察官、アラバマ州の連邦地区検事、アラバマ州の司法長官を経て、1996年に上院議員となり、上院司法委員会に属している。司法経験者として41年の経歴を持つ保守派議員である。

 

 トランプ氏が目指すワーシントンDC、政界に蔓延する汚職や特殊権利の浄化、自由貿易協定、北米自由貿易協定(NAFTA)の再協議、TPPの廃棄、さらに、憲法上の法の原則の復活をセッションズ氏が実施することは確実である。

 

 憲法修正案による連邦議会の全議員の任期制度の導入、議員が退職した後5年間はロビースト活動を禁じる、政権職員は生涯にわたり外国政府のロビーストになることを禁ずる、アメリカの選挙活動で海外政府やロビーストから選挙資金を受け取ることを禁ずるなどを進めていくことになる。

 

 これは、政治家と特定の業界、銀行や大企業、利益団体、海外政府などによる利益関係で、アメリカの司法や政権政策が変えられてきたからである。そうして、ヒラリー・クリントン氏が国務長官在任中に行ってきた不正献金(pay to play:クリントン財団への献金で政治的便宣を受ける)、クリントン財団を中心とする政界汚職の組織体を崩す目的でもある。

 

 セッションズ氏は、クリントン氏のメール問題に関しては、クリントン氏を支持してきた現職のロレッタ・リンチ司法長官ではなく、中立な立場を保てる特別検察官を任命して、クリントン氏を宣誓の下で虚偽の陳述、捜査の執行の妨害、機密書類の不適切な扱いと廃棄、犯罪行為の隠蔽、国家安全を脅威にさらした国家反逆罪などで訴追することを主張してきた。

 

 また、クリントン財団に関しても、RICO法で犯罪組織として捜査、起訴することを提唱してきた。RICO法(Racketeer Influenced and Corrupt Organizations Act: RICO)とは、特定の違法行為によって不正な利益を得る「ラケッティア活動」を通じて、組織的な犯罪を行う組織の活動を規制し、犯罪行為に対する民事責任と刑事罰を規定した法律である。

 

 利益を得るためのラケッティア活動には、脅迫、偽造、資金洗浄、誘拐、殺人、麻薬売買、人身売買、資金の着服など多くの犯罪を包括している。クリントン財団は犯罪組織と断定され、資金洗浄、賄賂、脅迫、児童誘拐、人身売買、などの犯罪行為に関わってきたことが、ウィキリークスの資料で明らかとなっている。

 

 トランプ氏が大統領選挙中に、圧倒的な国民の支持を得た1つの理由は、大統領になった際、クリントン氏を起訴、「刑務所に入れる」との公約である。トランプ氏は最も適切な人材を選んだことになる。セッションズ氏が司法長官となれば、特別検察官を任命してヒラリー・クリントン氏とクリントン財団の訴追を目指す。