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欧州主要国間で反ユーロ、EU離脱の動きが拡大しているなか、欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は、初めてEU崩壊の可能性を認めた見解の転回を見せた。加盟国のEUからの離脱は可能としたが、それにはECBとの負債の完全な清算を条件とした。
高まるイタリアのEU離脱の可能性
ドラギ総裁は、 欧州議会のイタリア代表に宛てた手紙のなかで、ユーロ圏からの離脱は可能であるが、「ユーロシステムから離脱する場合は、その国の中央銀行がECBに対して抱えている負債を完全に清算する必要がある。」と離脱の条件を提示した。巨額の負債を抱える国にとっては、条件を満たすことは困難であるため、離脱への牽制とも捉えられる。
10月に欧Eurobarometerが行ったイタリアでの世論調査では、41%がユーロを支持、47%が共通の単一通貨が経済に悪影響を与えていると答え、初めて反ユーロの意見が支持を上回った。その傾向はさらに増大するとみられる。EUから離脱して、ユーロからイタリアリラに戻ることを支持している人が増えていることになる。
しかし、イタリア中央銀行が抱えている負債は、2016年11月末時点で3586億ユーロにのぼり、2015年度GDPの22%に相当する額である。ユーロ又はイタリアリラに戻り、リラの切下げを実施しても負債の清算は大変困難である。イタリアがEUを離脱するとなれば、この負債をどのように清算するかが問題となる。
イタリアがデフォルトすることも選択肢として残されているが、ドイツ( ユーロ圏の最大債権国)の反対やユーロ圏だけでなく世界の金融市場、他のEU離脱を計画している国への影響を考えるとそれも容易に可能とは言えない状況である。