米大統領の英国訪問と英国EU離脱の共通点

09.02.2017

Photo: independent

 

 英政府のオンライン請願サイトでは、「トランプ大統領の英国公式訪問の中止を求める」嘆願書に178万人以上が署名している。英国国民は、「英女王ならびに皇太子が迎える人物としてふさわしくない」、「特定7カ国の一時入国禁止の大統領令に反対である」、「英国はトランプ政策を支持しない」などを国民の声として、英主要メディアは大々的に報道したが、集まった電子署名に虚偽の疑いがある。

 

 英国のEU離脱を巡る国民投票の一週間後、結果に不満をもつ人々が再投票を求める直訴に300万人以上の署名を集めた。署名には、バチカン市国から4万人、フランスから2万人、北朝鮮から2万4,855人、人口250人のイギリス領南極地域から2,735人となりデジタル偽装署名ソフトが使われたとして、直訴の信憑性が問われた。

 

 今回のインターネット上の嘆願書には、英国民185万人が署名したことになっている。トランプ大統領が発令した特定7カ国からの一時入国禁止の大統領令への抗議として、英国公式訪問の中止を求める動きとして報道されている。署名が100万人を超え、英議会で討議に持ち込むために必要な署名数を超えているため、2月20日の議会での討議が検討されている。テレサ・メイ英首相がトランプ大統領の年内公式訪問を招待しているにも関わらず、可否を巡って下院での討議が行われる可能性がある。

 

 しかし、EU離脱の再投票の時と同じように、今回もイギリス以外の北朝鮮、南極、バチカン市国や世界各国からの署名が集まっている。英国本土の国民より海外からの署名が大半であることは、自動化ソフトWebotsが使われている可能性が高いことを示している。

 

 

トランプ大統領の英国訪問の高い支持率

 1月30~31日に英YouGovが行った世論調査結果では、英国民の49%はトランプ大統領の英国訪問を支持、36%は反対、15%は分からないと答えた。主要メディアが報道する英国が反トランプ一色の状況とは違うことを示している。

 

 

Credit: YourGov

 

 トランプ大統領の英国訪問中止を求める嘆願書に反論する、「トランプ大統領は英国公式訪問をするべき」の嘆願書も発足、30万人の署名が集まっている。注目することは、反トランプと反EU離脱の支持者が同じロンドン中心に集中している一方で、トランプ支持者と英国EU離脱の支持者がロンドン以外の英国全土に分布していることである(下の図)。ランプ大統領の英国訪問とEU離脱問題には、メディアが電子嘆願書を根拠に世論を誘導するような動きに共通点がある。

 

下図で左がトランプ大統領訪問を支持する意見の分布、右が不支持意見の分布である。極端な不支持意見のロンドンへの集中が明確だが、それが電子嘆願書の偽造によるものなのか、都市部に反対派の集中しているのかは区別ができない。

 

 

Credit: (Credit: petitionmap.unboxedconsulting.com)