Credit: Michael Morgenstem
ダボス会議(世界経済フォーラム)の開催を前に、国際NGOのオックスファム(Oxfam)は16日に、世界の経済格差に関する報告書を発表した。2015年には、世界の人口の経済的貧困の下位半分、約36億人の総資産の合計額が上位62名と同額であった。2016年には資産データをより詳細に調査した結果、世界における経済格差がさらに拡大し、上位8名の資産が36億人の総資産と同額であったことに警告を発した。
世界大富豪トップ8人
世界大富豪トップ8人の総資産の合計額は約4260億ドル、約48兆 6千億円に相当する。そのグローバルエリートたちは以下の8名である。
1. 米マイクロソフトの共同創業者 ビル・ゲイツ
2. Zaraなどのアパレルメーカーのインディテックス社(スペイン)の創業者 アマンシオ・オルテガ
3. 米投資会社バークシャー・ハサウェーイ会長 ウォーレン・バフェット
4. メキシコの通信会社アメリカ・モービルやニューヨーク・タイムズ紙の大株主 カルロス・スリム
5. 米アマゾン・ドットコムの創業者 ジェフ・ベゾス
6. 米フェイスブックの共同創業者 マーク・ザッカーバーグ
7. 米オラクル社の共同創業者 ラリー・エリソン
8. 米通信会社の創業者、元ニューヨーク市長 マイケル・ブルームバーグ
深刻化する経済格差
2015年以降、世界の富裕層の1%が所有する富は、それ以外の世界人口の99%の総資産を上回っている。経済格差は増加の傾向を示してきた。1988~2011年の間に下位10%の所得が年間平均で3ドル(約345円)以下しか増えていないのに対して、上位1%の所得は182倍も増加している。米国でも同様の結果が出ている。経済学者のトマース・ピケティ氏の米国経済の調査によると、過去30年間、下位50%の所得増加が0%であったのに対して、上位1%は所得を300%も増やしたと報告している。
経済格差の要因
経済格差の拡大には以下の要因が挙げられる。
1. 富裕層の1%が経営するのはいずれも巨大企業で、世界のトップ10社は世界180ヵ国の合計GDPを上回る収益を出している。
2. これらの大企業は、より多くの収益を確保するために、経営陣と比べて労働者の賃金を上げなかったり下げたり、供給連鎖(サプライチェーン)にコスト削減を強制している。巨大企業のオーナー、経営者や大株主はほとんど富裕層の1%に属している。欧米の株主重視の経営システムでは、より短期的に最大限の利益を追求することから、経営者や株主が資産を増やせる仕組みとなっている。
3. 巨大企業はタックスヘイブンを使って納税回避を行っている。生産拠点を置く発展途上国では税収が減り、世界の下位の国の経済状況が改善されない。個人的にも様々な納税回避手段を利用している。
4. 富裕層の30%は富を相続している。富める者はますます富を増やす資本、手段、情報をもっている。
5. 富裕層はダボス会議やビルダバーグ会議でみるように、政治や国の政策を左右する影響力をもっている。自分たちに利益が還元する「ポジティブフィードバック」を得る為に影響力を行使する。
世界の富裕層に富が集中するほど、世界の経済格差が拡大している。世界人口の10人に1人が1日2ドル以下の生活をしている貧困状況にあるなか、上位の8名が下位半分に相当する資産を保有している。世界中の既存政治への不満と幻滅が広がっているのも、この格差を反映したものである。現状の格差は「社会を分断する脅威」となっていることが、ダボス会議に集結する世界の「グローバル・エリート」への警告である。