過去30年の最高税率となる英国

08.02.2017

Credit: telegraph

 

 フインランド、スエーデンなどの北欧諸国の高い税金はよく知られているが、英国の税金がこれらの国々に迫る勢いで上昇するとみられている。緊縮財政が続く中で英国は個人及び法人に過去30年間、際立った高い税金を課してきた。英国統計局の予測では2019-20年度の税率が2086-87年度のサッチャー政権以来最も高率となる。

 

 経済の低迷で慢性的な税収増大の傾向にある英国は2013年に所得税最高額を50%から43%に引き下げた。これによって2013年のEU諸国の課税ランキングで英国は11位になった。上位は北欧諸国、スペイン、オランダ、ベルギー、オーストリア、など50%以上の国々である。

 

 

サッチャーの悪夢が再び

 サッチャー政権の英国は福利厚生など公共サービス支出が突出したため債務超過は219億ポンド(3兆円)となっていた。統計局はメイ政権も緊縮財政を継続するため回復は2024-25年度までは見込めないと予測している。また今世紀中は緊縮財政が続くとみられている。下のグラフから2008年の金融危機の影響を除けば税収の一定した増加傾向がよくわかる。

 

Source: economicshelp.org

 

 英国統計局によれば今年度の債務超過は先進国中第4位となる682億ポンド(9.5兆円)は2008年の金融危機以前の60年間で過去最高となる。これによって国の債務は1965-66年度以来で最高となる。過去最高の税収にも関わらず債務超過となるのは低い経済成長率のためであるが、日本も例外ではない。Oxford Economicsの予想では2017年と2018年の成長率はそれぞれ1.6%と1.3%である。

 

 

財政健全化への道は遠い

 EU離脱前の予想より現在の経済悪化が激しく、国内消費が鍵となる経済インフレ傾向が続くので消費が落ち込むと予想されている。英国経済研究所(注1)所長のリトルウッド氏は緊縮財政政策の効果が低いことに懸念を示し、税収が不足していることより大きすぎる支出が問題であるとしている。(注2)

 

(注1)Institute for Fiscal Studies(IFS)。英国の税制システムの詳細な報告を刊行している。

(注2)EU離脱後の英国経済が悪化する予測もあったが、実際には悪化はなかった。

 

 

不公平な税率

 財務省は支出削減に向けて努力するが公共サービスの質が低下しないようにする責務があると考えている。英国には種別として所得税、地方税、VATなど間接税が政府の説明は所得に関わらず一定の税率(フラット税制)を目指すとしているが、2010-2011年度の所得と(収入に占める)税率の関係(下のグラフ)では、最も所得の低い10%は所得税率上限に相当する収入の45%を払うのに対して、富裕層の平均は35%で不公平感が大きい。底辺所得層の国への不満、不信感が増大している今、単純な所得税上限改定では国民の支持を得られない。

 

 

Source: huffingtonpost