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大晦日のケルンの集団暴行事件で幕が開けた2016年は、その後も欧州では多くのテロ事件が勃発し。ISとの戦争終結も見えてきた年末であったが、2017年早々トルコのイスタンブールで銃乱射テロにより多くの外国人を含む39名が犠牲となった。
2016年12月にはIS拠点のひとつであるシリア北部のアレッポが政府軍の支配下に置かれ、戦争終結も視野に入った感も束の間のもので、人々の安堵感は消え、トルコは再びISによる国内テロへの緊張が一気に高まった。
巻き込まれる外国人
今回のテロでは2名のインンド人とイスラエルの少女を含む27名の外国人が犠牲となり、遺体は悲しみにくれる祖国の家族に引き取られた。人種の坩堝のイスタンブールでテロが起きれば外国人が巻き込まれることは不思議ではないが、今回の犠牲者に外国人が特に目立った。宣伝効果を狙い新年を街頭で祝う習慣がある外国人を狙った。銃撃のあった時間のクラブは新年を祝う若者で混み合っていた。
現場となったレイナ・ナイトクラブ(Reina nightclub)は「東西の架け橋」として観光客が絶えることのないボスポラス海峡を眺望する好位置にあった。目撃者によると犯人は警備されていたナイトクラブに侵入しAK-47を乱射したという。トルコ内務省大臣は犯人は逃走中である。警察は当初からISの犯行とみて捜査を進めているが、事件後にISが犯行声明を出した。
トルコはイスラム教であっても西欧文化が日常生活に入り込んでいる。ボスポラス海峡に面するイスタンブールはまさに「東西の架け橋」であり、デイスコは若者に人気でナイトクラブやホテルのダンスホールには週末になれば欧米からの観光客と地元の若者が集まってくる。女性の服装も寛容でコーランが聞こえてこなければ西欧にいる感覚である。こうした場所を標的にすると外国人が犠牲になるため、ISが恐怖を世界中に拡散するには都合が良かったのだろう。犯人はAK-47をもちクラブの女性警備員を射殺して侵入し犯行に及んだ。
警告されていたテロ
トルコでは2015年10月にアンカラで爆弾テロがあり95名の死者を出している。またイスタンブールでは2016年1月12日にブルーモスクの爆弾テロで10人(内9人が外国人)が犠牲となっている。今回は事前に察知した米国情報機関が警告をだし10日前から1万7千人の警察官で警備を高めていた。警察は道路を封鎖して搜索したが仮装を捨てナイトクラブから逃亡した犯人は逃亡中である。
今回の犠牲者の中にはクラブで行われる新年パーテイの警備していた2名の警察官も含まれている。クラブの女性警備員と現職警官合わせて3名が(武装していたにもかかわらず)瞬時に射殺されていることから、銃器になれたテロリストの犯行と考えられる。米国の情報から警察も事前に危険性を察知し新年パーテイが危険にさらされることも認識されていたが、襲撃を許して犠牲者を出したことで市内は騒然としている。
根深いクルド人勢力と政府の対立
クルド人武装勢力は米国の支援下でシリアのIS勢力の駆逐に成果をあげている。2015年にアンカラで起きたIS爆弾テロは政府とクルド人勢力の衝突に反対するデモ隊を狙ったものであったが、ISがラッカ拠点をクルド人武装勢力に攻撃されていることへの報復とされる。デモ行進していたクルド人が犠牲になったが、トルコ政府はテロ犯行にはISの他にクルド人勢力が関わったとしてクルド人勢力への圧力を高めた。それ以来、トルコ政府とクルド人勢力は衝突を繰り返してきた。
トルコ政府はシリア内のIS掃討作戦では欧米諸国(有志同盟)に参加しているものの対クルド勢力においては米国との隔たりが大きい。アンカラの他の2都市でも爆弾テロが起きており、トルコ政府はこれらが一連の爆弾テロがクルド人労働党(PKK)による選挙妨害とする目的としている。今回のテロはイスタンブールで外国人を標的とした単独犯であり爆弾テロでない点から、これらのテロと異なる組織(IS)が(アレッポの報復としての)宣伝効果を狙ったものである可能性が高い。
Source: bostonglobe