Credit: SDO/NASA
SDO衛星(注1)のHMIカメラによる太陽黒点イメージ(上)に示されるように、太陽黒点が観測されない「無黒点」期間が2週にわたって続いたことで、ミニ氷河期との関連性が話題となっている。地球気温を決める太陽放射は太陽の磁気活動の周期と同調して、約0.1%の幅で変動している。その平均値変動と黒点数は相関があることから最近の黒点の減少がミニ氷河期の始まりと解釈されたためである。
(注1)Solar Dynamics Observatory。NASAが2010年に打ち上げた太陽観測衛星で太陽大気を高い空間分解能・時間分解能で観測して地球と地球周辺の空間に対する太陽の影響を調査することが目的。HMI(Helioseismic and Magnetic Imager)は太陽内部の活動と外部の磁場活動から太陽変動の仕組みや太陽表面の磁場活動など太陽内部を調査するための検出システム。
太陽黒点活動に11年の周期性があることは、過去100年間にわたるデータの蓄積でが明らかである。
太陽活動と寒冷化
太陽活動とミニ氷河期を関連づける根拠のひとつが有名な北半球を襲ったマウンダー極小期(Maunder Minimum(1645-1715))と呼ばれる寒冷期である。このミニ氷河期と太陽活動と関係することを英国の研究者が提案したことから、太陽活動のバロメーターとして太陽黒点の密度との関係からミニ氷河期が近いとされた。
Credit: earthlink.net
太陽活動の低下で異常な寒冷化が起こったマウンダー極小期はおよそ300年前、1645年から1715年の間である。太陽内部には北極と南極の間を揺動する磁気の波があり、10-12年周期で太陽活動に影響を与える。太陽活動の周期観測の精度を上げた研究で、2030年には太陽活動は60%低下しミニ氷河期を迎えるとと予想された。太陽活動周期を細かく見ると磁場の2層構造の干渉で周期に微妙なズレ(うねり)が生じ、その効果を補正すると2030年代に太陽活動が低下する確率が高いとされた。。
太陽活動のピークは磁極の逆転に対応する。上図のように太陽の磁場観測データでは極磁極の符号変化(磁極反転)はすでに始まっていることを示しているが、太陽深部のダイナモ効果は複雑で不明な点が多い。観測している磁場が太陽のごく表面の部分のものにすぎないからである。
太陽黒点と太陽放射
現在の太陽の周期24が太陽活動の早期低下や南北で磁極の挙動が異なる点など通常の11年周期構造と異なる点でも予想を難しいものにしている。しかし今回観測された太陽黒点密度の低下がミニ氷河期の到来が早まったことを意味するかといえば断言できるほどのデータはない。しかし衛星観測による全太陽放射と太陽黒点の関係(下図)で、黒点の減少が太陽放射の減少につながることは明らかなので、SOHOデータ(注2)と黒点数の今後の推移(http://sunspotwatch.com/)に注意する必要があるだろう。
関連記事