Credit: Nature Comm. 4 1732 (2013)
近年のEVの販売実績が好調である。また携帯端末のバッテリー容量の向上が求められ、再生可能エネルギーの安定化のためにバッテリーの性能向上が重要な課題である。バッテリーの性能は瞬発力に相当するエネルギー密度と持続力に相当するパワー密度で表現される。このほか蓄電池については充電時間の短さと繰り返し充電回数(寿命)が指標になる。
現在、電力密度と容量で総合的にトップを行くのがリチウムイオンバッテリーであるが、一般的にこれらを両立させて高性能化を実現することは難しい。そこで正極と負極の間に挿入される電解膜の厚みを減らし、電極の表面積を増大するための工夫が必要になる。微細加工はこのための一つのアプローチだが限界がある。そこで登場する技術が3D化(従来のバッテリーは3D)と微細化を組み合わせた3Dマイクロバッテリーである。
イリノイ大学の研究グループはスーパーキャパシタ並みのエネルギー密度(7.4 mW cm-2 μm-1)の3Dマイクロバッテリーを開発した。その構造は模式的にはトップのイメージのように立体的に正極材料(LiMnO2)を被覆したNiと負極材料(NiSn)の積層ブロックを交互に並べたものである。
Credit: Nature Comm. 4 1732 (2013)
このバッテリーではNiを導線としてそれに被覆されたマイクロセルが積層された構造で、高電力密度と充電時間の短縮化を実現している。基本的な原理は従来のリチウムイオンバッテリーであるが、3Dマイクロバッテリー化して高性能を引き出すことに成功しこれまでの3Dバッテリーと比較してエネルギー密度が3桁向上している。
また3Dプリンタでバッテリー電極の微細加工を行う試みもある(Advanced Mater. 17 June 2013)。下の写真のように極細ノズルから放出された特殊なインクが固化してコイル状に重ねられた導線を形成する。
Credit: 3D PRINTER WORLD
テスラ社がパナソニックと共同出資で建設しているリチウムイオンバッテリーの向上は電力容量がMWとなることからメガファクトリーと呼ばれている。またチェコでは独自開発の3Dマイクロバッテリーの工場が地域投資家の融資で建設されている。
大規模製造ラインの稼働によってリチウムイオンバッテリーの供給能力は倍増すると期待される。リチウムの需要は年25%で増大しているが資源としてのリチウムは米国の埋蔵量が世界の47%だが塩水中に含まれるので海水から抽出することで資源枯渇する恐れはないこともリチウムイオンバッテリーの市場増大に寄与している。