Intelが3次元メモリ技術で高速SSDを開発

25.03.2017

Photo: intelligentliving

 

2017年3月17日、インテルとマイクロンはNAND型フラッシュメモリより最大77倍高速の新型メモリSSD(Optane SSD DC P4800X)を発表した。両社が共同開発する3Dメモリ製造技術3D XPointTMテクノロジーで、メモリ単独ではNAND型フラッシュメモリの1,000倍高速、DRAMと比べて記録密度が10倍、NAND型フラッシュメモリ(注1)に比べて書き換え寿命が1,000倍という。ただし発表されたSSDは375GBでNAND型フラッシュメモリに比べて最大77倍の(読み出し)速度向上にとどまる。

 

(注1)NAND型フラッシュメモリは、集積化・低消費電力化が可能な反面、ECC処理を行う必要があり信頼性に劣る。フラッシュメモリはNOR型、NAND型とも書き込み・消去を繰り返すことで絶縁層が破壊されることから、書き込み回数に制限があり、永久保存には向かないが今回発表されたSSDの価格の1/3となるため、3D不揮発性メモリを使ったSSDがNAND型フラッシュメモリカードを置き換えることは難しく、揮発性メモリ(DRAM)と不揮発性メモリ(NAND型フラッシュメモリ)を補完するデータセンター向けの新市場を目指すものと見られている。

 

 

3D XPointTMテクノロジー

3D XPointTMテクノロジーは、3D化をメモリセルを垂直に配して2階建て構造とすることで、試作チップでダイあたり128Gビットの高密度化を達成した。3D XPointTMテクノロジーの根幹にあるのはサムスンと東芝が激しい開発競争を繰り広げてきた3Dメモリ製造技術である。詳細な情報開示がなされていないが、積層数に制限がない点では東芝方式と同様の製造技術である。3Dメモリをいち早く市場に投入したのはサムスンだが、東芝は3Dメモリの研究を地道に続け、積層数によらないで露光及び加工工数を一定に保てる手法の開発に成功し、2007年に公表した。一方、メモリの採算性が悪化したサムスンは、20nmで2Dメモリ微細化に決別し、2013年度に東芝同様にメモリセルを垂直に積層した3D-NAND型フラッシュメモリの量産を開始した。

 

 

買収を進めるマイクロン

2002年、マイクロンは東芝からDRAMの米国の製造拠点を買収し、2013年には経営破綻したエルピーダメモリも買収している。2017年4月1日に東芝が分社化を予定しているNANDフラッシュメモリーを手掛ける半導体子会社「東芝メモリ」の買い手候補でもある。2017年3月23日に発表された第2四半期の決算報告は前年比売上の58%増となったことで、同社の株価を押し上げると共に東芝買収の有力候補と見られている。売上増の背景は携帯端末とデータセンター向けの需要であった。今回のSSD発表もこうした需要に対応できる体制を示すためのものと言える。

 

 

インテル・マイクロンの「情報統制」

3D XPointTMテクノロジーには当然東芝の3Dメモリ製造技術との関連が深いはずだが、この件に関してインテルは技術的優位性を強調するだけで、情報開示を避けている。そのためインテル社のウエブで3D XPointTMテクノロジーの情報だけがアクセスできない。インテル・マイクロン連合も32積層チップをサンプル出荷しているし、サムスン、東芝も製品を市場に送り込んでいることからすればインテル・マイクロンの「3Dメモリ情報統制」は奇妙に思える。

 

インテル・マイクロンが技術開示を避けるのは、マイクロンが「東芝メモリ」の買収候補であることと関係するかもしれない。自社の3Dメモリの技術的優位性をアピールできれば買収に有利な展開に持ち込めるからだ。マイクロンにとって「東芝メモリ」を買収できれば、高密度3Dメモリ市場を独占でき、インテルはデータセンター向けにSSD搭載プロセッサの市場独占を強められる。半導体産業全体に及ぼす影響が大きい「東芝メモリ」の公正な買収には3D XPointTMテクノロジー情報開示がなされるべきである。