サハラ沙漠に降った雪

25.12.2016

Credit: Geoff Robinson

 

2016年の北半球は酷寒の冬を迎えているが、サハラ砂漠(アイン・セフラ地域)の降雪がメデイアを賑わしている。1979年以降で初めてとされるこの地域の降雪は長周期太陽活動の低下によるミニ氷河期と関連づけられるのかが注目される。

 

砂漠の上空の気温は地中海側から吹き込む冷たい風で冷え込んでおり、蒸発した水が降雨時に冷却され稀に雪になる。アイン・セフラ地域以外の地域では2005年と2012年に降雪を記録している。サハラ砂漠の玄関口であるアイン・セフラ地域に雪が降ったのは1979年でこの37年間降雪はなかった(注1)。海抜1,000m以上と標高の高いアイン・セフラ地域はアルジェリア国境に近いサハラ砂漠の玄関口で有名だが赤茶色の普段の砂漠は白化粧して様変わりを見せている。

 

(注1)最後のサハラ降雪が1979年と言うのは、アイン・セフラ地域に限っての話でサハラ砂漠(アルジェリア西部)への降雪は2012年1月17日に観測された。また2005年にもアルジェリア、チュニジアで降雪が観測されている。

 

 

Credit: NASA(2005年1月25-27日に撮影されたもの)

 

世界中で最も乾燥している地域の一つであるサハラ砂漠が降雪した理由は何か。標高が高いこととアトラス山脈に近い地域であるために、上空が寒気に晒されることは珍しくない。冬季の降雪は世界最高気温を記録したカリフォルニア州の死の谷やチリのタクラマカン砂漠でも記録されている。

 

今回のサハラ降雪は記録的な2016年の寒波によるものと考えられるが、正確な理由は不明であるが極地上空の酷寒の空気がジェット気流で南に流れ込む時期が例年より早まり北米の降雪時期が早まり豪雪に見舞われる予測と矛盾しない。

 

NOAA発表の2016年冬のCFS(Climate Focasting System)モデル予測気温から逸脱した実測気温は11月にピークを迎えるエルニーニョ現象と同期している。下の図に示す2015年冬季のジェット気流の経路は地中海で南下しアフリカ北端をかすめる。

 

 

Source: weathertrends360

 

地球が太陽活動の長周期の変動に対応して寒冷化の方向に進んでいる。15年後の2030年にミニ氷河期(Little Ice Age)に突入するとした学説が発表されているが、今回のアフリカ北部アイン・セフラ地域の降雪はミニ氷河期が早まったことを示しているわけではない。

 

2015年から2016年にかけての大規模なエルニーニョ現象の影響は世界各地に異常気象を起こしてきた。長周期的な太陽活動の低下による寒冷化と短周期のエルニーニョ現象とが重なり、複雑な気候変動を生み出している。