Credit: Nano Lett.
ハーバード大学の研究グループは金属ナノ構造体(ナノピラー)を用いて、可視領域の非収差平面反射レンズをつくる技術を開発した。同グループはチタン酸化物による誘電位相シフタで光学レンズと等価な反射鏡を平面でつくることに成功した。(Nano Lett. Jan. 26, 2017)
金属膜上に誘電体膜を介して成長させたチタン酸化物のナノピラー(柱状のナノ構造)は490-550nmの可視波長領域で平面反射レンズと等価な光学特性を持つ。光学レンズに比べて極めて薄い平面である特徴を生かして光学機器への応用が考えられる。また開発されたナノピラー技術を用いれば、波長が長くなると焦点距離も長くなる従来と逆の収差分散関係を持つレンズ設計が可能になることも特徴がある。
これまでもナノ構造を用いた非収差平面レンズの研究が活発に行われており、収差分散制御は光学分野のナノ科学の最重要課題のひとつであった。例えば透過型では表面プラズモンポラリトンを利用して多層膜で位相シフト補正を行う試みがある。(Scientific Reports 19885, 2016)
Credit: Scientific Reports
ナノピラーによる収差分散関係の制御が可能な金属平面レンズ設計が可能となり、LED照明下のイメージング、蛍光及びリン光分光への応用が期待される。下にナノピラーのSEM写真を示す。ここで白い線が200nmに対応している。位相制御のためにはピラー(柱)群の形状、寸法、間隔を制御することが必要となる。研究グループはこのために金属チタンの酸化物を選びナノピラー製作技術を積み重ねてきた。
Credit: Capasso Lab/Harvard SEAS
今回の研究では490-550nm(青色から緑色の可視光)の波長領域で、ナノピラーで収差の無い平面鏡集光が可能となった。この手法によれば金属レンズが単一露光で製作可能となるためナノプリントに比較してレンズの大量生産に適している。
米国はナノテク産業を国策としてNational Nanotechnology Coordiated Infrastructureで全国の大学、研究機関の連携を支援しているが、今回の研究の一部もこの一環として行われたものである。