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これまで北極の海氷面積が減少していることは地球温暖化説に都合の良い根拠の一つであった。しかし南極の氷床面積は年々増加しており、地球表面の平均気温の上昇という単純な気候変動では説明できない。このほど南極沿岸の氷床の減少が暖流による影響によるものであることが検証された(Science Advances 2 (12) e1601610 (2016))。
南極東部のトッテン氷棚(下図)は海面上昇3.5mに相当する体積もの海氷が暖流の影響を受けている。精密な暖流調査によって海氷の空洞に(0.22 ± 0.07) × 1066 m33 s-1暖流の流れ込んでいることがわかった。この暖流による熱輸送によりこれまで観測され的た海氷の減少が説明できる。大洋の暖流変動で現在までに観測されている南極東部の氷床の減少と海水上昇が暖流の影響で説明できることがわかった。
Credit: Science Advances 2 (12) e1601610 (2016)
南極の氷棚から周囲の海に落ち込む氷塊によって海氷は形成される。海氷は互いに押し合い強固な構造で海水に接する陸地の氷床が崩れ落ちるのを防いでいる。しかし氷棚が薄くなり支える強度が弱まると、陸地の氷床が海氷となり溶けて海面を上昇させる。暖流の影響で氷棚が薄くなるため海氷が溶けて海面が上昇する。北極の氷床を支える岩盤は不安定で、暖流の変化によって陸地の氷河が大量に失われる可能性が指摘されていた。
暖流が南極大陸に最も近づくのはベーリングハウゼン海とアムンゼン海に面した水域であるが、ここの暖流の温度上昇が著しいことが南極西部の氷床の減少を引き起こしている。海流による氷床の侵食が南極東部の氷床減少の原因であることは平均気温の上昇(地球温暖化説)にとって不都合な真実となる。中でもトッテン氷河はその体積が海面上昇に変換すると3.5mにも達するが、海水を多く含み過去、海水と氷河は相互に変換する複数の時期を経てきたことを示唆する。
下図の34-37、41の観測地点で計測された氷点(Tfr)基準の温度とトラフに沿った海流の流速(Vtrough)(m/s)を示している。これらの観測地点では暖流は氷点より2.2-3.2C高温で氷床が溶け出す要因になっている。
Credit: Science Advances 2 (12) e1601610 (2016)
南極大陸の氷床が地球温暖化による海水温度の上昇で溶け出すというモデルも提案されているが、暖流の熱輸送がこれまでのモデルには取り込まれていなかった。暖流が氷棚の空洞に流れ込むことで海氷隣海面上昇を引き起こすことが初めて明らかにされた。
とりわけ影響力の大きい場所はトッテン氷河の空洞へ流れ込む暖流である。暖流による熱輸送で溶け出す氷床の量は衛星データによる実測の表彰面積減少とよく一致する。暖流の影響で時間とともに変化する南極東部の氷床は地球温暖化説には不都合な真実となった。