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英国ブリストル大学のキャボット研究所の研究グループは高レベル放射性廃棄物から5,000年間電力を供給できる半永久バッテリーを製造する技術を発表した。研究チームは黒鉛型原子炉(注1)の使用済み核燃料棒の炭素から、半永久的な寿命を持つダイアモンド・バッテリーが製造できる。
(注1)英国には閉鎖された黒鉛型原子炉から廃棄された放射性黒鉛が95,000トン存在する。核反応によって黒鉛ブロックの表層では炭素はベータ崩壊半減期が5730年の放射性同位体(C14)として存在する。
黒鉛ブロックを加熱すると放射性の炭素は蒸発し気体となるので、この気体を高温処理して人工ダイアモンド(注2)に加工することで、C14からなるダイアモンドを製造することができる。このダイアモンドはワイドギャップ半導体で放射線を照射すると、シリコンやゲルマニウム同様に正孔と電子を生成する。純粋な(ドープしない)ダイアモンドに(一方を接地される)電極をもつ簡単な構造のバッテリーができる。半減期が5730年なので5000年に渡って発電能力を持つことになる。
(注2)化学気相蒸着法( Chemical Vapor Deposition、CVD)。マイクロ波プラズマで励起してラジカル種を作り、高温高圧相であるダイアモンドを安定化させ800C以上の基板上に固定する。
放射性ダイアモンドを通常の炭素原子のダイアモンドで被覆すると放射線が吸収され安全なダイアモンド・バッテリーが得られる。このダイアモンド・バッテリーは通常のダイアモンドで周囲を覆われているため、ベータ崩壊の電子が被覆層に吸収され放射性でないため安全である。
そのため原子炉の監視装置、宇宙衛星、人工心臓など長寿命の安定電源として多くの応用が期待されている。
150,000トンに及ぶ原子炉の使用済み核燃料は高レベル放射性廃棄物として蓄積されているが、各国とも有効な処分法は確定していない(注3)。黒鉛型原子炉は英国やロシアが初期に建設したが、多くは老朽化して閉鎖されているが、現在でも稼働中の原子炉の12%は黒鉛型原子炉(下図)とその派生型である。
Source: Wiki
(注3)フインランドのオンカロに地中保管施設が建設中であるが、数10万年先まで安全に保管できる保証はない。バックエンドと呼ばれる原子炉の使用済み核燃料の後処理果がつけられていない。日本では再処理施設は稼働していないため、フランス、英国に送って再処理を行い原発で保管している。